「ダルシャ様、いつもどうもありがとうございました。」

「こちらこそ、いろいろと世話になったな。
あ、くれぐれも今回のことは家の者にはまだ……」

「はい、わかっております。」

店主はそう言って、にっこりと微笑む。



「では、また……」

たくさんの商品を注文したダルシャを、工房の店主はいつまでも見送っていた。



「やったね!
ほら、無事にイグラシアに着いたじゃない!」

「あ……あぁ……」

何事もなくイグラシアに着いたというのに、ジュリアスはまだ緊張が解けていないようだった。



「とりあえず、今夜はもう遅い。
何かうまいものでも食べて、この町の宿に泊まろう。」

「ダルシャ…食事は部屋で食べることは出来ないか?」

「そうだな。では、宿の者に頼んでみよう。」

ジュリアスの気持ちを察したダルシャは、力強く頷いた。







「あぁ…なんだか懐かしい……
前にここに来た時もこの宿だったよね。」

「そうだっけ?」

「そうだよ。
ほら…ボクがこの近くで倒れて……」

「倒れた??……なんでだ?」

「……フレイザーは何も覚えてないんだな。」



部屋で食事を採りながら、七人は他愛ない会話を交わす。
ジャネットだけは相変わらず何もしゃべらず黙々と食べていたが、特にそのことを気に留める者はいなかった。




「そういえば、あの時は、まだジャネットはいなかったんだよね。
ボク達とラスターがセリナを探してて……」

「あ……」

「セリナ…?どうかした?」

「そうだわ!
ねぇ!ジュリアスを、エルフの村へ連れて行ってあげたらどうかしら?」

「エ…エルフだって…!?
き、君達は俺を殺すつもりなのか!?」



怯えたような声を上げ、突然立ち上がったジュリアスに、ほんのしばしの沈黙が流れ、それは一斉に笑い声に変わった。



「な、なにがおかしいんだ!?」

「ジュリアス…まずは座りたまえ。」

ダルシャに腕を引かれ、ジュリアスは渋々腰かけた。



「良いか、ジュリアス…エルフが人や獣人を食うと言うのは嘘だ。」

「そ、そんなこと、なぜわかるんだ!?」

「そりゃあわかるわよ。私はエルフと一緒に暮らしてたんですもの。」

「えーっ!?」
「えーっ!?」

奇しくも、ジュリアスとジャネットの驚きの声が重なり、二人は顔を見合わせた。


- 702 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

トップ 章トップ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -