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「うわぁ、これだったら絶対にわからないよ。」
ジュリアスの顔と手には包帯がぐるぐると巻かれ、以前、ジャネットが着ていたような深いフードのついたローブをまとったその姿は、少し異様ではあったが、とても獣人には見えなかった。
「良いか、君は火事にあい、酷いやけどを負った私の友人だ。
イグラシアに良い医者がいるので、紹介することにしたと言う。」
「なるほど!それは良い考えだね。
きっと誰も疑わないよ!」
エリオットは、手を打って大きく頷いた。
「あ、それじゃあ、ジュリアスは私の夫ということにしたらどうかしら?
その方が信憑性が高まるんじゃない?」
「それは良い。
では、そうしよう。
セリナはジュリアスに連れ添ってくれ。
ジュリアスは、病人らしくな……それと、どんな時にもびくびくはするなよ。
鬱陶しいだろうがそれも少しの辛抱だ。」
「わ。わかった……でも、本当に大丈夫なのか?
俺は、人間に見えてるか?」
「あぁ、絶対に大丈夫だ。」
ジュリアスは、ラスターの自信に満ちたその声に、小さく肩を震わせた。
「……貧弱な身体のおかげだな。」
「ジュリアス、またそんなことを……」
「ごめん……」
ジュリアスは、素直に誤り小さく俯く。
「……それでは、早速出かけよう。
街道に出る道がこの奥にあるらしい。
では、ジュリアス…案内してくれ。」
「みんな、本当にありがとう。
万一、俺のことがバレたら…その時は……」
「万一などということはない。
心配事の9割は実現しないものだ。
そんな起こりもしないことを考えるより、明るい未来のことを考えていた方がマシってものだぞ。」
そう言って、ダルシャはジュリアスの背中を優しく叩いた。
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