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「あそこだよ。」
「……こんな森の奥にいるのか。」
「そうだよ。
人間がなかなか来られないようにって、ジュリアスがこんなに草木をはびこらせたんだって。」
エリオットを先頭に、長い時間をかけてようやく四人は小屋にたどり着いた。
「さぁ……あれ?ジャネット……やっぱり、いやなの?」
小屋から少し離れた所に立ち尽くすジャネットに、エリオットが気付き声をかけた。
「私はここで待ってるから……」
「じゃあ、俺も一緒にいるよ。」
「いいよ、私はひとりで……」
「いいから、いいから。」
エリオットとセリナは少し困ったような顔を見合わせ、小屋の中に足を踏み入れた。
「ダルシャ、買って来たよ。」
「ご苦労だったな。さて、それでは早速準備に取り掛かるか……
あ……ジャネット達はやっぱり来なかったんだな?」
「ううん、来てるんだけど、フレイザーと一緒に外で待ってるよ。
ジュリアス…この子はセリナだよ。」
「あ…あぁ…セリナ……俺はジュリアスだ。よろしくな。」
「よろしくね、ジュリアス。」
セリナはジュリアスの手をしっかりと握り締めた。
「まだ他にもいるのか?」
「フレイザーと恋人のジャネットが外にいるのよ。
その…ジャネットはちょっと人見知りをする性格で……ね?エリオット?」
「う、うん。だから、彼女のことはあんまり気にしないで…」
二人は無理に微笑み、ジュリアスを傷つけないようにとその場を誤魔化した。
「ジャネットは、獣人のことが嫌いなんだ。」
「ラスター…!」
せっかくの二人の努力を一瞬でぶち壊すラスターに、セリナの眉間には深い皺が刻まれた。
「そうか…でも、それが普通だと思う。
あんたらみたいに、獣人のことを怖がったり嫌ったりしない人間の方が珍しいよ。」
「ま、そういうことだ。
それに、彼女には獣人を嫌う理由もあるんだ。
あまり気にしないでくれ。
そんなことより早く準備をしてここを引き上げよう。
さ、ジュリアス、ここに立ってくれ。」
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