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「私は……いやだ。」

ジャネットは、そう言ってフレイザーに背中を向けた。



「そうか…じゃあ、俺たちは別に行くことにしよう。
みんなよりは少し遅れるが、ディーラに戻ってそこから船でイグラシアまで行こう。
……セリナはみんなと一緒に行くか?」

「ええ…私はそうするわ。
それはそうと、フレイザー…昨夜も私達あの人達に会ったのよ。」

「あの人たちって…?」

聞き返すフレイザーに、セリナは呆れた顔を向けた。



「……獣人さんを狙ってる人達よ。
私達、昨夜もあのレストランに行ったんだけど、またあの人達がいたから、近くの席に座って話を聞いてたの。
明日の夜、ハンターが町に到着するって言ってたわ。」

「なんでも、その中の一人の兄さんが、獣人に殺されたらしい。
かなり凶暴な獣人みたいだけど、本当に大丈夫なのか?」

「真実は全然違うんだ。
ジュリアスは人間を嫌ってはいるが、だからこそ、自分から人間に接近したりはしない。
彼は今までにも何度も人間に殺されそうになったそうだ。
一度は小屋に火を放たれて、あやうく死にかけたって言ってたぞ。」

「なんで、あんたはそんなに獣人言うことを信じるんだ?」

「そりゃあ、実際に会ったからだ。
彼は良い奴だ。
それに……」

フレイザーは、急に口ごもり、次の言葉はなかなか出てこなかった。



「なんだよ。
何か言いにくいことでもあるのか?」

「何か秘密でもあるの?」

「そ、そうじゃない。
……ジュリアスは、獣人は獣人なんだけど……」

「はっきり言えよ!」

ジャネットがイライラとした様子でフレイザーに怒鳴り、フレイザーは決まりの悪い顔で小さく笑う。



「ジュリアスは……獣人にしては、小柄なんだ。」

「小柄……?
そんなことが何か問題でもあるの?」

「そうだな…ラスターは最初、まだ子供っていうのか少年くらいかと思ったって言ってた。
俺もそんな風に思った。
つまり…背が低いだけじゃなくて、骨格とかも普通の獣人よりは華奢だし、鬣もあんまりふさふさしてないんだ。
ダルシャが言うには、発達障害みたいなものか、もしかしたら何らかの病気じゃないかってことなんだけど、特に体調が悪そうってことはなかった。
でも……ジュリアスは、とてもコンプレックスを持ってるみたいで…それで、獣人達の村に行くのは嫌だって言ってるんだ。」


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