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「ダルシャ……
俺は今まで誰かを信じたことなんて一度もなかった。
だから…信じることがどういうことなのかもよくわからないし、そうすることがなんだかとても怖く感じるんだ。
でも……信じたい気持ちも強い。
あんたはそんな怪我をしてまで俺の命を救ってくれた。
そんな人間はあんただけだったし、これから先だってきっとそうだと思う。
だから、信じたい……だけど……やっぱり怖いんだ……」

そう言って、ジュリアンは頭を抱えてまた俯いた。




「おかしなことを言うなよ。
あんたは、今までにも命の危険を感じるような危ない目にあってきたんだろう?
今だってそうだ。
すぐにでも、あんたを殺そうとする奴らが来るかもしれない。
なんたって、町の奴らはハンターまで雇ってるんだからな。
そんなことに比べたら、信じることなんて少しも怖くはないはずだ。
俺…最近になって少しずつわかって来たんだ。
スラムにいた頃の俺は、あんたと同じで誰のことも信じちゃいなかった。
でも、誰のことも信じてないから、俺は誰にも信じても愛してももらえなかったんじゃないかって…最近、なんとなくそんなことを考えるようになったんだ。
今だって俺はそんなに信じてもらってないと思う。
だけど、俺は…俺のことを信じてくれた人のことは絶対に裏切らない…
そんな風に、少しだけ自分のことを信じられるようになってきたんだ。
昔の俺だったら…きっと、なにか得になると思ったら、誰のことだって簡単に裏切ってたと思うんだ。
でも、それは良くないことだ。
今の俺にはそれがやっとわかった。
そして、自分を信じられるようになってきたことが…俺は……嬉しいんだ。」

「そっか……
ラスター……どうもありがとう……」

ジュリアスのそっと差し出した片手を、ラスターは力強く握り締めた。


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