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「それで、フレイザー……さっきの話の続きだが……
ジュリアスの討伐隊…あぁ、失礼。
ジュリアスを襲おうとしてる者達はどのくらいいるんだ?」
「俺にもはっきりしたことはわからない。
隣のテーブルに座ってた人の話を聞いてただけだから。
ただ、腕の良いハンターを依頼しただとか、話に出て来た名前だけでもけっこういた気はするし、そこにいたのも6人だったから、おそらく10人前後はいるんじゃないかな?」
「……今度ばかりは俺もおしまいだな。」
ジュリアスのその一言に、部屋の中がしんと静まった。
「ジュリアス……そんなことを言うもんじゃない。
私達は、君を絶対に……」
「やめてくれ!
俺はもうこの世には飽き飽きしてたんだ!
いい機会だ!この際、一思いに…!」
「馬鹿野郎!!」
いきなり殴りかかったラスターの拳に、椅子から転げ落ちたジュリアスが反撃の体制に変わった。
「やめろ!二人とも!!」
フレイザーとダルシャが二人の間に入り、今にも組み合おうとするラスターとジュリアスを引き離した。
「ラスター、いきなり殴るのは良くない。」
「だって、こいつが……」
まだ興奮のおさまらないラスターを、フレイザーがそっと制した。
「あんたら、なんでそうおせっかいなんだ?
願い石はもうやった。
俺がどうなろうが、あんたらに関係ないだろう?
俺が俺の命をどうしようと、そんなの俺の勝手だろう??」
「ジュリアス……私達は、願い石が目的でここに来たのは本当だ。
だが、君を獣人の村に連れていくことも、最初から目的の一つだったんだ。」
「だから、なぜ?
そんなことをして、あんたらに何の得がある?」
ラスターは、ジュリアスのその言葉に肩を揺らした。
「何がおかしい!?」
「ジュリアス…この人達はちょっと変わっててな。
損得で物事を判断しないんだ。」
「そういうわけではないがな…
私はアルディ…私達がイグラシアで初めて出会った獣人だが、彼とは信頼関係を築くことが出来た。
だからこそ、私は彼のために…ひいては獣人のために出来ることをしたいと思っている。
人間と獣人が仲良く暮らせる世界を作れれば一番だが、今の私にはそこまでの力はない。
たいしたことは出来ないが、せめて私は縁あって出会った獣人の力にはなりたいと…私はそう思っているんだ。」
そう言って、ジュリアスをじっとみつめるダルシャの視線を、ジュリアスは疎ましげに振り払った。
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