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「ありがとう、とてもうまかったよ。」

「こんなことになるんなら、町で買い物してくれば良かったな。」



ジュリアスは、ラスター達が考えていたよりもずっと打ち解けているようだった。
食事をしながら、この森で受けた数々の酷い仕打ちについても彼は話した。
幾度となく人間達はジュリアスを排除しようと森を訪れ、小屋を燃やされてあやうく死にかけたこともあったのだという。
その度に彼は森の奥へ奥へと引っ込み、家の周りに草木をはびこらせ、人間が足を踏み入れない工夫を施したのだと語った。



「全然話が違うじゃないか!
俺達は、この森に住む獣人は人間を酷く憎んでる凶暴な獣人で、殺された人間もいたって聞いた。」

「……死んだかどうかはわからないけど、襲われた時には俺だって本気で反撃したさ。
だけど、俺は自分から人間を襲ったりなんてしない。
人間になんて会うことさえいやなんだ。
俺から近付くわけがないだろう。」

「噂というのは、どんどん大きくなったりありもしないことが付け加えたりするもんだ。
だが、そのおかげでこの森に立ち入る者がいなくなったのは、良いことじゃないか。」

「それはそうだけど……
あいつらが俺をこのまま放っておくとは思えない。
俺が人間を憎んでるのは本当だけど、あいつらだって、それと同じくらい獣人を憎んでるんだ。
俺がこんな森の奥にいることさえ、気に入らないみたいだ……」

そう言うと、ジュリアスは悲しそうに瞳を伏せた。



「ねぇ、だったら、ジュリアスも獣人達の村に……」

「エリオット…!」



ダルシャはエリオットに向かって小さく首を振る。
だが、エリオットには、その仕草の意味がよくわからなかった。



「え……だって、アルディだったら絶対にジュリアスを迎え入れてくれるはずだよ。」

「そうだよな。あ、ジュリアス…アルディっていうのは、俺達が初めて会った獣人でね……」

「……俺は行かない。」

「え……?」

ジュリアスの漏らした小さな声に、エリオットとラスターは不思議そうな顔で聞き返した。



「俺はどこにも行かない!
ここで、殺されたって良いんだ!」

そう言い残すと、ジュリアスはゆっくりと立ち上がり、寝室に戻って行った。


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