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「そんなことはどうでも良いけど、それじゃあ、ここに願い石があるっていうのか?」
フェルナンドの問い掛けに、皆が一斉に頷いた。
「こいつは驚いた。」
アーニーは、冷やかしの口笛を吹く。
「フレイザー……」
ダルシャの意図をくみ取ったフレイザーは、箱の中から緑色の願い石を取り出し、二人の前に差し出した。
「こ、これが願い石……!?」
二人は、願い石を遠巻きにじっと眺めた。
「一体、どこでみつけたんだ?」
「これは……レティシアが持ってたものです。
奴等には絶対に渡さないでくれって書いてあったから…だから、ダルシャにやったんです。」
「レティシアが……それで、こいつは願い石なのか、それとも双子石なのか?」
「それはわかりません。」
「……そうか……」
二人は話をする間もずっと願い石から目を離さないでいた。
「そうだわ。フェルナンドさん!
お二人がこの石を使ってみませんか?
巫女を感じる能力を願ってみたらどうかしら?」
それを聞いたフェルナンドとアーニー、そして、オズワルドは、同様にきょとんとした顔でセリナをみつめた。
「セリナ…何を言ってるんだ?」
「何って……御気分を害されたのならごめんなさい。ただ、私は……」
「セリナ…まさか、君は知らないわけじゃないだろう?」
「知らないって……何を?」
「護り人が願い石を使うことはタブーだ。
万一、使ったら、酷い不幸がもたらされるとされている。」
「えっ!?」
オズワルドの話に驚いたのはセリナだけではなかった。
「そうなのか!
俺達、そんなこと、全然知らなかった。」
ラスターは、興奮したように声をあげ、フレイザーやジャネットは小さく頷いた。
「なんだ、おまえ達は、そんなことも知らなかったのか。」
「仕方ないだろ。
今までは護り人についてもほとんど知らなかったんだから。」
「全く困った奴等だな。」
アーニーはそう言って苦笑する。
「それじゃあ、俺が願えば良いんじゃないか?
あんたらに、巫女を感じる力が宿るようにって。」
「ば、馬鹿なことを言うな!
俺達はこのままで何の問題もない。
これはおまえ達が困った時に大切に使うんだ。」
「私もラスターに賛成よ。
フェルナンドさん達が本来の力を取り戻して巫女を感じるようになったら、きっと今までよりも巫女を救うことが出来る。
それは巫女にとっても、ありがたいことだわ。
ねぇ、みんなもそう思わない?」
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