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「なんだ、誰も巫女の楽園の話は知らないのか。」

「それはどんな話なんですか?」

アーニーとフェルナンドは、ダルシャの質問に顔を見合わせて笑った。



「……実は俺達も知らないんだ。」

「えっ!?」

「あんたらなら何か知ってるんじゃないかって思ったんだけどな。
……セリナも知らないのか?」

「聞いたことがありません。」

セリナは申し訳なさそうに首を振る。



「そうか……それは残念だな。
俺達は、自分達に巫女を感じる力がないと気付いてからは、早く家を離れたいとそればっかり考えた。
……とにかくショックだったし、辛かったんだ。
役立たずの自分達を消してしまいたいような気分だった。
だが、俺達はそれまで町を出たことなんてなかったし、遠くって言っても隣町あたりまでしか行ったことがなかったんだ。
だから、行き先にも困って……」

「そんな時、思い出したのが死んだ巫女の言葉だったんだ。
巫女の楽園に行けば、俺達にも何か少しくらい巫女の役に立てることがあるかもしれないって思ったんだ。
小島っていったらここしか知らないし、俺達は短い書き置きを残して、ここに来た。」

「それじゃあ、あなた方はまだそんな子供の頃からここに?」

「その通りだ。
だから、まるで根っからのここの者みたいだろ?」

アーニーがおどけた調子でそう言うと、皆も釣られて微笑んだ。



「それで、ここで巫女の楽園の話は聞けたんですか?」

「それがな……確かに、ここの年寄り達は、そんな話を聞いたことがあるとは言うんだが、その謂れみたいなことについては知ってる奴がいないんだ。」

「おかしな話だろ。
あ、セリナ…ここに来てなにか他所とは違うようなことはなかったか?
楽園って言われるからには、巫女にとって何か良いことがあるんじゃないかと思うんだが…」

「いいえ、そんなことは何も…
これといって変わったことも…あ…」

「どうした?
何かあるのか?」

「そういえば、私……願い石の存在がまるでわからなかった……」

「な、なんだって?願い石だと……」

アーニーとフェルナンドは、目を丸くしてセリナをみつめた。



「あ……オズワルドさん……」

セリナは焦った様子で気まずい視線をオズワルドに送った。



「あ……あはは……あ、悪気があったわけじゃないんです。
まさか、フェルナンドさんが護り人だなんて知らなかったから、それで、その……」

オズワルドはフェルナンドに願い石のことを話さなかったことを、曖昧に笑って誤魔化した。


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