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「そ、そんなことがあったのか…」
フェルナンドは、驚いた様子でアーニーをじっとみつめた。
「今はもうなんともないのか?
大丈夫なのか!?」
「あぁ、見ての通り、なんともない。
そんなことより、フェル……おまえはなんで怪我を……」
「……さっき話した巫女を追ってきた奴らと戦った時に下手をうっちまった。
だが、こんな怪我、なんともあるもんか。
最悪だったのは、巫女が姿を消したことだ。
巫女は…俺達に怪我を負わせたことを気に病んだんだ……」
「ば、馬鹿なっ!そんなことくらいで……」
突然、感情的な声を出したアーニーに、フェルナンドは悲しい目を向けた。
「アーニー…その話には続きがあるんだ。
巫女は……巫女は、海に身を投げて死んだ。」
「な、な、なんだって〜!
おまえ、なんで止めなかった!なんで助けられなかったんだ!!」
いきなり立ち上がり、フェルナンドの肩につかみかかったアーニーを、ダルシャが優しく引き離した。
「フェル……どうして……」
「……すまなかった。
だが……まさかこんなことになってるとは思わなかったんだ。
だから、俺達はずっと巫女を探していた。
巫女がすでに死んでいたという話を聞いたのも、ついさっきのことなんだ。」
「……そうだったのか……」
アーニーは、そう言うと、がっくりとうなだれたまま言葉を失った。
「あの〜…」
緊迫した二人のやりとりに口を挟むことも出来ず、気まずい沈黙の続く中、最初に口を開いたのはエリオットだった。
「なんだい?」
「あなた達はどうしてそんなに巫女のことを大切に思うんですか?」
それは、その場にいた皆が感じていたことだった。
「え……そ、それは……」
フェルナンドとアーニーは、顔を見合わせながら返す言葉に詰まる。
「もしかして……あなた方は、護り人なのではありませんか?」
思いがけないダルシャの言葉に、皆の視線がダルシャに集まった。
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