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「ダグ……どうし…」
「あ…アーニーが戻った!」
男はそう言って、外を指差した。
「な、なんだと!?」
フェルナンドは片足をひきずりながらも、外へ飛び出した。
「よう、来てたのか?」
日に焼けた男が、陽気に片手を挙げて声をかける。
「来てたのかじゃないだろう!
こんな長い間、どこで何してやがった!」
アーニーは苦笑すると、まわりにゆっくりと目を向けた。
「見慣れない者がいっぱいいるな。
どうかしたのか?」
「あぁ、いろんなことがあったさ。話してやるから、家の中に入れよ。」
歩き出したフェルナンドを、アーニーはじっとみつめる。
「……フェル……足、どうかしたのか?」
「それももちろん話す。」
厳しい表情でそう言うと、フェルナンドはまた家に向かって歩き出した。
*
「……そんなことがあったのか……」
ここ数ヶ月に起きた出来事を、フェルナンドはかいつまんで話して聞かせた。
アーニーは、その話にじっと耳を傾け、陽気な雰囲気のする彼の顔からは笑みが消えた。
「一体、どうしたんだ!
なぜ、こんなに長い間戻らなかった?」
「……嵐だ。」
「嵐?」
アーニーは、小さく頷く。
「俺は、その頃、ある男をペルージャに運んでいた。
それはうまくいったんだが、嵐が近付いて来てるのがわかったから、俺は、男の知り合いの所で嵐が過ぎ去るのを待とうとした。
そこに向かう途中で、急に嵐が酷くなってきて、俺は飛んできた大木に直撃された。
それからしばらくのことは記憶さえないんだ。
例の男が俺を医者に診せ、ずっと付き添ってくれたようだ。
一時は危ない時期もあったらしいが、俺はなんとか生き延びた。
時間はかかったが、どうにか助かって、ここに戻って来られたって訳なんだ。」
どこか照れくさそうにそう話して、アーニーは微笑んだ。
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