61
「ねぇ、セリナはどう思う?
レティシアさんには、オズワルドさんの気持ちは伝わってなかったのかな?」
「伝わってないわけはないと思うわ。
でも……きっと、言えなかったのよ。」
「命を捨てる覚悟をしても?」
「それは……」
セリナは困ったような顔をして、そっと俯いた。
「それでも言えないのではないかな?」
ダルシャはセリナの隣に腰を降ろし、二人の話に口をはさんだ。
「セリナ…君がレティシアさんの立場だったらどうする?」
「私は……私は誰かを好きになったことがないから、そんなことわからないわ。」
「でも、想像することは出来るのではないか?」
「……それはそうだけど……」
セリナは歯切れの悪い口調でそれだけ言って口ごもった。
「さっきのフェルナンドさん……足をひきずっていたが、もしかしたら、あれは巫女を追ってた奴等と争った時に負った傷かもしれないな。
……一生あのままなのかもしれない。
エリオット…たとえば、君が原因で、誰かが酷い怪我を負ったらどう思う?」
「そ、そりゃあ、申し訳ないと思うよ。」
「誰でもそう思うだろうな。
その時にはまだ仲間が生きていた。
だから、自分のせいでさらに怪我をする者が…或いはへたをすれば命を落とす者が出るかもしれないと思うと、いたたまれない気持ちになったのではないだろうか?」
「だから、皆の前から姿を消した…?」
「私はそう思う。
もしかしたら、オズワルドの身に危害が及ぶことを心配したのかもしれない。」
「……だよね。ボクもきっとそうだと思うよ。
だけど、手紙には少しくらい気持ちを書けば良かったのに。」
ダルシャは、レティシアの残した手紙を懐から取り出した。
「確かに、あまりにも事務的だな。」
セリナは手紙を受け取り、何かを探すように懸命にみつめる。
「ダルシャ…この手紙、何か変じゃない?」
「変……とは、どういうことだ……」
「どうと言われると困るのだけど……」
手紙をみつめながら、セリナは小さく首を傾げた。
- 648 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
トップ
章トップ