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「う、嘘だ!そんなこと、あるはずがないっ!」

村の広場の片隅で、大きな声を上げたのはオズワルドだった。



「オズワルド……認めたくはないだろうが、時期からしても容貌からしても、その女性はレティシアさんと符号するのではないか?」

「そ、そんなことがあるもんか!」

村への訪問者を、もの珍しげに村人達が遠巻きにみつめる。



「婆さん、どうかしたのか?」

一人の若い男がみんなの元へ近付いてきた。



「おぉ、スタン。
この人達は、この前の身投げの人の知り合いかもしれんのじゃ。」

「この人が……あっ!!」

男は、オズワルドを見て驚いたような声を発し、そのまま、どこかへ走り去った。



「スタンの奴…一体、どうしたというんじゃ…」

「ねぇ、おばあさん、他になにかないかな?
さっき話してくれた他に思い出すこと…」

「そうじゃな…
たいがいのことはさっき話したと思うが…」

老婆は腕を組み、静かに目を閉じた。



「おぉ、そうじゃ!」

「婆さ〜ん!」



老婆が目を開けたのと、先程のスタンという青年が叫びながら走ってきたのは同時だった。



「スタン!ほれ、あれが……」

「わかってる!これのことだろう?」

スタンが皆の前に差し出したのは、青い石のついた腕輪だった。



「あ!それ、オズワルドのと同じ……」

オズワルドは、スタンの手のひらの腕輪を信じられないような顔でみつめ、そのまま、俯いて肩を揺らし始めた。



「これは、死んだ女が身に付けてた腕輪だ。
身元を示すようなもんじゃないが、何かの手がかりになればと思って、とっといたんだ。」

「それと、首にはこれによく似た青いペンダントをしていたよ。
それは飛び込んだ拍子にどこかにいったみたいで、スタンがみつけだした時にはなくなっていたがな…」

その話を聞いたオズワルドの嗚咽が、一際大きくなった。



やはり、エリオットの想像は正しかった。
崖から飛び込んだ女性がレティシアであることは、ほぼ間違いのないことだと思われた。
予想以上のオズワルドの嘆きように、誰もかける言葉さえみつけられず、長い沈黙の時が流れた。

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