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「お家はどっちなの?」

「あっちじゃ。すまんのう……」

三人は老婆の指差す方向へゆっくりと歩き始めた。



「それにしても、身投げに間違えられるなんて、あんたら何をしてたんだ?」

「ただ、景色を眺めてただけよ。
あそこからの眺めは最高だもの。」

「……わしもあの時はそう思った。」

「あの時って?」



老婆は急にセリナ達から顔を背けた。



「おばあさん……どうかしたの?」


暫しの沈黙の後、老婆はゆっくりと話し始めた。



「少し前に、あそこに若い女が立っていた。
あそこは眺めの良い場所じゃから、それを見てるんだろうと思ったんじゃが、おなごは少しずつ前に歩いて行った……
これはいかんとわしは声をかけたが、おなごは一度、わしの方を振り向いて悲しそうに微笑み……そして、あそこから……」

「そんなことが……」

「わしは急いで村に戻り、親戚の者におなごを探してもらった。
だが、みつかった時にはすでに……」

老婆の声はか細く、そして震えていた。



「そうだったの。だから、あんなに必死になってくれたんだね。」

「……わしがすぐにでも飛び込んでいたら、助けられたかもしれん…そう思うと辛くてのう…」

「馬鹿言うなよ。
あんなとこから飛び込んで助けられる奴なんて、滅多にいないさ。
気の毒だが、その女はきっと海面に叩きつけられた時点で死んでたんだと思う。
婆さんが気に病むことなんてないぜ。」

老婆はラスターの言葉に何も答えず、ただ、小さく鼻をすすった。



「迷惑をかけてすまんかったのう。
村はそこじゃ。
あとは歩いて帰るから……」

「ここまで来て、遠慮なんかするなよ。」

ラスターは老婆を下ろすことなく、歩き続けた。



「……その女の人は村の人だったの?」

「いや、おそらくは大陸からの者じゃ。」

「……どんな女の人?」

「エリオット、そういうことは……」

「おばあさん、教えて……」

ラスターの制止を聞かず、無理に話を続けるエリオットをセリナは心配そうにみつめる。



「……年はあんたらより少し上かのう……
華奢で、どこか寂しげなおなごじゃった。
最期の時……長い金髪が風に煽られて、太陽みたいに煌めいてのう……」



エリオットの表情がにわかに強張り、セリナは、その変化の意味を悟った。

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