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「さぁ〜、話すんじゃ!」
「ちょ…ちょっと待ってよ、おばあさん!」
「おばあさん、酷い勘違いだわ!」
ようやく口を開いたセリナとエリオットに、今度は老婆が目を丸くした。
「……勘違い?
なにが勘違いだと言うんじゃ?」
「私達は死のうとなんてしてない。」
「ボク達は、ここからの眺めがあまりに綺麗だから見てただけだよ。」
「な、なんじゃと!?」
老婆はますます目を丸くする。
「お〜い!セリナ、エリオット〜!」
「ラスターだわ。」
「ラスターとは誰なんじゃ?」
「私達の旅の仲間よ。」
三人が話しているうちに、ラスターが姿を現した。
「……どうかしたのか?」
「あなたこそどうしたの?」
「先に行っといてってことだったけど、あんたら、行き先を知らないじゃないか。
だから、皆待ってるから早く来いって言いに来たんだけど……誰なんだ?」
ラスターは、老婆をしげしげと眺めすかした。
「実は、私達……身投げと間違えられて……」
「なんだってぇ!?」
ラスターは呆れ顔で老婆をみつめた。
「……それじゃあ、本当にわしの勘違いなのか?」
「当たり前だろ。この二人に死ぬ理由なんてない。」
「……特に私はそんなこと絶対にしないわ。
私は、人の命をもらって産まれてきたんだもの……
私は死ぬことなんて絶対に出来ないの。」
思いがけないセリナの言葉に、エリオットとラスターは息を飲む。
「人の命を……?」
「ま、それはとにかくだな……身投げっていうのは婆さんの勘違いだ!」
「そ、そうだったのか……
それはすまなかった……」
老婆はそう言うと、その場にへなへなと腰を降ろした。
「おばあさん、大丈夫!?」
「あ、あぁ……安心したら、なんだか急に気が抜けてな……」
そう言いながら、老婆は立ち上がろうとしたが、力が入らずうまく立てなかった。
「困った婆さんだな。さ、乗れよ。」
遠慮する老婆を、セリナ達は無理矢理ラスターの背中に預けた。
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