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「おい、オズワルド、本当にこっちで間違いないのか?」
「ずいぶん遠いんだね。」
「……もうすぐだ。」
七人は、朝早くに宿を発った。
島の反対側だから、宿からはかなり遠いとは聞かされていたが、長く休むこともなく、ずっと歩き通しだというのに、夕方近くになっても目的地には辿り着かず、皆は疲労から機嫌が悪くなっていた。
「もうすぐ、もうすぐって、さっきから一体何回……」
不満を漏らすラスターに、オズワルドは黙ったままで一点を指差した。
「あそこだ。」
草むらに入ったオズワルドの後に皆も続いた。
「あそこって…ただの崖じゃないのか?」
「だから、みつからないのさ。」
崖に着いた七人は、思い思いにあたりを見渡す。
「どこがどうなってるんだ?」
「こっちだ。気を付けろよ。」
オズワルドが案内する後を、皆、恐る恐る着いていく。
「そういうことか!」
オズワルドの案内で下に降りた六人は、崖に空いた穴をみつけた。
「そう、この横穴に船が着けられる。
上からは見えないから、なかなかみつからないんだ。」
「なるほどな…」
六人は感心しながら、今降りてきた道を慎重に引き返した。
「残念だが、ここは見込み違いだったようだな。
彼女がここに来たとしても、それはきっと一時のことだ。
ここには、これと言って長くいられるような場所もない。」
「……そうだろう。
では、僕達の暮らしてた家に行こう。
今からじゃ宿に戻るのは大変だからな。」
「そこまでは遠いのか?」
「いや、そう遠くはない。」
「あんたの話はあてにならないからな。」
ぶつぶつと文句を言いながら、ラスターはオズワルドに着いていく。
「……セリナ、どうしたの?」
「うん……レティシアさんの気持ちを考えたら、なんか……ね。」
セリナは皆が歩き出しても、じっと海の方を眺めていた。
「セリナの気がすむまで好きにしてて良いよ。
ボク、待ってるから。」
「ありがとう、エリオット……」
セリナとエリオットは、海をみつめながら、じっと何かを考えるように立ち尽くす。
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