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「……私だ。」
聞き慣れた低い声が誰のものか、三人はすぐに理解した。
「ダルシャ!」
扉の向こう側には、ダルシャと見知らぬ若い男性が立っていた。
「君達が来ていると宿の者に聞いたのでな。」
ダルシャと若い男性はゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた。
男性はやけに落ちつきなく、部屋の中をきょろきょろとしていた。
「オズワルド、座りたまえ。」
「オズワルド!?それじゃあ、この人が……」
セリナはオズワルドをじっとみつめ、オズワルドも驚いたようにセリナをみつめていた。
「ダルシャ、まさかこの子は……」
「そう……石の巫女だ。
残念ながら、君の探している巫女とは別人だが。」
「な、なんだって!」
オズワルドは、がっくりとうなだれ、長椅子に腰を降ろした。
「すまなかった。
騙すような真似をして……」
「ダルシャ、どういうことなの?」
「それより、この人は誰なんだよ。」
ダルシャは何度も頷き、小さな咳払いをひとつした。
「彼はオズワルド。
石の巫女の護り人だ。」
「えっ!この人が…」
「先程、この近くで何かを探している様子の彼をみつけた。
彼の風貌やその様子から、私は彼がオズワルドではないかと思い、声をかけた。
だが、彼は私を警戒し、話も聞かずに逃げ出そうとした。
だから、私は言ったんだ。
私は石の巫女と一緒に行動していると。」
「……あんた達、一体、誰なんだ?レティシアのことは本当に知らないのか?」
「レティシア…?」
「彼と一緒に逃げていた巫女の名前…だな?」
オズワルドは、戸惑ったような表情を浮かべたが、やがて小さく頷いた。
「君達は、僕がレティシアと逃げてたことも知ってるんだな?」
「あぁ、そうだ。君の家の近くの…みんなに字を教えている老人に聞いた。」
「そうだったのか…」
「それだけじゃない。
ポーリシアのレオナルドさんから君のことを頼まれてな。」
「なんだって!
君達はレオナルドの知り合いなのか!?」
「あぁ、そうだ。」
ゆっくりと頷くダルシャに、ラスターだけが怪訝な顔を浮かべていた。
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