43
「エリオット…どこに行ってたんだ?」
「うん…ちょっと宿の人に話を聞いてきたんだ。」
そう言うと、エリオットは聞いて来たばかりの話を話し始めた。
オズワルドと巫女らしき二人は泊まったことがないこと、柄の悪い三人組が、オズワルドと巫女らしき女のことを訊ねて来たこと、二組はどちらもこの宿には泊まらなかったことを。
「結局、ここでわかったのは当時の話だけだったんだ。」
エリオットは俯いたまま、小さく首を振る。
「彼らは間違いなくこの島には来てると思うんだが…どっちも宿には泊まりそうにないな。
それとも、もう一軒の宿の方なのかな?」
「フレイザー、あんたどう思う?
こんな状態で、セリナを連れていって大丈夫だと思うか?」
「……確かに難しいよな。」
「フレイザーまでそんなことを…」
セリナは悔しそうに唇を噛み締めた。
「よし、それじゃあ、俺とジャックがあたりを聞き込んで来る。
そこで問題がなさそうだったら、みんなで行こう。」
「それなら俺も……」
「万一、部屋に来られたら大変だ。
君とエリオットはセリナに付き添ってくれ。」
「……私は、とんだお荷物ね。」
苛立ったようなセリナの声に、エリオットは優しくセリナの手を取った。
「じゃあ、行ってくる!」
フレイザーとジャックは部屋を後にした。
部屋に残された三人は、気まずい空気の中、誰もが口をつぐんだまま、さらに気まずさを募らせていた。
「……こんな所まで来て、部屋から出られないなんて馬鹿みたい。」
セリナの発した小さな声には、恨みがましい想いがこめられていた。
「セリナ、ずっとじゃないよ。
フレイザーが戻ってきたら……あ、それより先にダルシャが帰ってくるかもしれないし……ね、少しだけ待ってようよ。」
セリナはエリオットのその言葉に何も返事をせず、動作で意志を示すこともなかった。
- 630 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
トップ 章トップ