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「セリナ……俺には正直に言えよ。
護り人と関わるのは本当はいやなんじゃないのか?」
「ラスター……気にかけてくれてありがとう。
でも、大丈夫よ。
私…この間はちゃんと話せなかったけど…今度はもっといろんなことを聞いてみたいと思ってるの。
それに……今回は石の巫女とも会えるかもしれない。
私は今まで母様以外の巫女とは会ったことがない。
私達にしかわかりあえないことを、いっぱい話したいの。」
「セリナ……」
ラスターは、セリナをみつめ、どこか悔しそうに唇を固く噛み締めた。
「小島にはまだ危険な奴等がいるかもしれないんだぞ。」
「そんな者…私は少しも怖くないわ。
……だって、私達にはみんながついててくれるんだもの。
ねぇ、ラスターも、私を守ってくれるでしょう?」
そう言って微笑んだセリナに、ラスターはぷいと背を向けた。
「……セリナ。」
「なあに?」
「以前……あんたがスラムに迷い混んだ時のこと……覚えてるか?」
「もちろんよ。
あの時、あなたは私を助けてくれた……」
「失望させて悪いけど……」
ラスターはゆっくりとセリナの方に向き直る。
「あれは、あんたを助けたわけじゃないんだ。
俺……あの日、親父と揉めてイライラしてて、それで、その憂さ晴らしっていうか……ちょうど、そんなタイミングに出くわしただけなんだ……」
ラスターが話し終えると、セリナは穏やかな顔で微笑みかけた。
「あなたは私を助けてくれた……
それは紛れもない事実。
私にはあなたがそうした理由なんてどうでも良いことだわ。」
「セリナ…だけど……」
「ラスター…あの時、あなたが助けてくれなかったらどうなってたと思う!?」
「そ、それは……」
ラスターは想像した予想を口には出来ず、そっと俯いた。
「私ね……あの時まで誰かに助けてもらったことなんてなかったの。
自分を守れるのは自分だけだった。
だからね……誰のことも信用してなかったし、期待もしてなかった。
だから、あなたが来てくれた時、とても嬉しかったのに、それよりも驚きの方が先に立って……私…自分でも混乱してるのが良くわかった。
あの時、私にも出来たことは何かすこしくらいあったかもしれないのに、あなたが戦ってくれてるのをただぼーっと見てることしか出来なくて……」
セリナは一気にそう話すと小さく身体を震わせた。
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