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「エリオット、あなたバグゥアを知らないの?それとも忘れてるのかしら?
バグゥアっていうのは、とても良い香りのする甘くて美味しい果物よ。
しかも、その果物は少し変わってて、実が二つに割れるんだけど、割れた実をくっつけておくと、また元通りにくっついてしまうの。
って、実は私も食べたことはないのよ。
バグゥアは、高い山の上でしか出来ないし、とても高級な果物だから。」

「バグゥアは離れてもまたもとに戻るし、しかもくっつくのは元々一つだった実だけなんじゃ。
バグゥアならなんでもくっつくというわけじゃない。
その性質から、結婚式の時に振舞われたりするんじゃよ。
わしも、ずいぶん昔に知り合いの結婚式で一度食べたきりじゃ。
……あんたなら、何度も食べたことはありそうじゃな。」

「えぇ、まぁ……」

どこか困ったような表情で、ダルシャが答える。



「おじいさん、これは恋人同士や夫婦に喜ばれるんじゃない?」

「そう思うかね?」

「うん、これは首飾りだけど、指輪とかでも良いと思う。」

「そうかい、あんたのような若い嬢ちゃんがそう言ってくれるんじゃ、きっとその通りだろうな。」

老人は顔をほころばせ、エリオットに向かって頷いた。




「……ところで、今日は依頼じゃないとすると何の用なんだ?」

老人は傍らの剣をダルシャに返し、肝心なことをようやく質問した。



「はい、実は、私達は人を探しておりまして……」

ダルシャは、トーマスから聞いた、老人がこの町でオズワルドを見たという話をした。



「あぁ、それなら間違いない。
あれは、トーマスの家の近くに住むあの男だった。」

「それで、その時…オズワルドさんはおひとりでしたか?」

老人はゆっくりと首を振った。



「それでは、女性と一緒だったんですね?
若い金髪の……」

「その通りじゃ。
女の体調が良くないようで、薬屋を探していたようだが、ここには薬屋はない。
隣町に行けばあると、教えたそうだ。」

「どなたがオズワルドさんと話されたんですか?」

「この近くの……案内してやろう。」

老人は立ち上がり、三人は慌てて老人の後に続いた。



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