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「ここがフェンディアだな。」
ダルシャは、ゆっくりとあたりを見渡す。
三人が辿り着いたその町は、どこにでもありそうな小さなひなびた町だった。
「まずはおじいさんの家を探さないとね。」
通りがかりの男に訊ねた所、職人の老人の家はすぐにわかった。
*
「あ、多分、あそこだね!」
町の商店街のすぐ傍に、その家はあった。
古くて小さな家だ。
「すみません。ここは細工職人の……」
扉を叩きながら言いかけたダルシャは、窓越しに作業をする老人の姿をみつけ、その確信を強くした。
老人も三人の訪問に気付き、作業の手を停めて玄関に向かった。
「依頼かね?」
「いえ、そういうわけではないのですが……」
「ほぅ…これはまた素晴らしいものを持ってるんじゃな。
少し見せてくれんか?」
老人の視線はダルシャの剣に注がれ、そこから動かない。
「え、えぇ、どうぞ。」
三人は部屋の中に通された。
散らかった部屋の長椅子に身を寄せて座り込み、老人が剣の鞘の点検に飽きるのをじっと待ったが、その作業はなかなか終わらなかった。
エリオットはそっと立ち上がり、手持無沙汰に作業台のものを見て周る。
「この細工をした者はたいそう腕の良い者じゃな。
本当に見事なもんじゃ。
デザインも良いが、どこにも手を抜いた所がない。
実に完璧な仕事じゃ。」
「そうですか。
これを作ってくれたのは、古くからうちの仕事を請け負ってもらってる職人なんです。」
「こんな丁寧な細工が出来る奴は滅多にいない。
間違っても、細工料をケチったりするんじゃないぞ。」
「ええ、それはもちろん……」
ダルシャは、老人の軽口に苦笑する。
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