25
*
「さぁ、明日からはまた追跡の旅が始まるぞ。
早く寝とかなきゃな。」
そう言いながら、フレイザーはベッドに潜り込んだ。
「あ、あぁ……
あの…フレイザー…さっきのことだけど……」
「……さっきの?
何のことだ?」
「だから……もしも、記憶が戻って……」
「またそれか〜……」
フレイザーはうんざりした顔で、大きなため息を吐く。
「あんたがあんな風に言ってくれたのは嬉しかったけど……
でも、もしも、エリオットがあんたのことを好きだったら……」
「ない、ない、ない!
そんなことは絶対にないから安心しろ!」
「なんでそんなことが言えるんだよ。
あんた達、記憶をなくしてるんだろ?
だったらわからないじゃないか。
それに、もしかしたら恋人同士どころかすでに結婚してたり……子供がいたりしたら……」
「俺とエリオットの間に子供……?」
一瞬、きょとんとしたフレイザーが、今度は大きな声を上げて笑い始めた。
「なんで笑うんだ!
そりゃあ、エリオットは若いけど、でも、子供がいたって不思議はないぞ。
結婚となればなおさらだ!」
「お、俺とエリオットに子供……!」
フレイザーは、笑い過ぎて込み上げた涙を拭いながら、腹を抱えて笑い続けた。
そんなフレイザーの様子に、ジャネットは不機嫌なものに変わっていく。
「……もう良いよ。」
寂しそうな顔でそう言ったジャネットに気付いて、フレイザーもようやく笑うのをやめた。
「ジャネット……俺とエリオットの間にはそんなことが絶対にないってことを、必ずわかってくれる日が来るさ。
だから、もう少しだけ待ってくれ。」
「もう少しって……どういうことなんだ?」
「……もう少しはもう少しだ。
それまで俺のことを信じてくれ。」
真っ直ぐな瞳でそう言ったフレイザーに、ジャネットは戸惑った様子でほんの小さく頷いた。
- 612 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
トップ
章トップ