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「あの日、俺は親父と言い合った後でむしゃくしゃしてて……
そんな時、たまたま、そういう場面に出くわしたっていうのが本当の所なんだ。
俺は、誰かを助けたいとか、困ってる奴を見過ごせないとか、そんな気持ちは普段から欠片程も持ってなかったからな。
単にイライラした気持ちをぶつけただけなんだ。
それなのに、セリナはものすごく感謝してくれて……
あそこでは誰かに感謝されるなんてこと…それをあんなにストレートに伝えられることなんてなかったから、俺……本当にどうしたらよいのかわからないくらい戸惑った。
で…いろいろ話してるうちに、セリナがすごく苦労してることを知った。
それに、セリナは自分が石の巫女だっていう重大な秘密を俺に教えてくれたんだ。
俺のことを信頼してるとも言ってくれたし……だから、セリナは俺にとってとても大切な人なんだ。
だけど、それは多分あんたがジャネットに感じてるような気持ちとはちょっと違う。
俺がそういう気持ちを感じてるのは、エリオットの方だ。」

「……そうか。
やっぱりエリオットのことが好きなのか……」

フレイザーはまた独り言のように小さな声で呟いた。




「なぁ…あんたにひとつ聞いておきたいことがあるんだけど……」

「あらたまって、何なんだ?」

「……もしも…もしも、あんたの記憶が戻って、だな。
昔、あんたとエリオットが恋人同士だったってことがわかったとしたら……あんた、どうする?」

「えっ!まだそんなこと言ってるのか?
俺とエリオットは絶対にそんな関係じゃないって…!」

「そんなこと、わからないだろう!
あんたらは現に今でもとても仲が良いんだし……」

フレイザーには本当のことが言えるはずもなく、ただ曖昧に笑うしかなかった。



「なぁ、どうすんだよ。
はっきり答えろよ!」

「そんなこと……決まってるだろ。」

フレイザーはジャネットの目をじっとみつめ、彼女の手をしっかりと握りしめた。



「フレイザー……」

「あ〜あ、見てらんねぇ……」

ジャネットは幸せそうな顔で頬を染め、ラスターは酒をぐいと飲み干すと、おかわりを注文した。



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