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「フレイザー……こうなったらやっぱりあの願い石はジャネットのために使うしかないね。
君のために、ジャネットはまた女として生きる決心をしたんだもの。
そう考えられるようになるまでに彼女はいろいろと悩んだと想うよ。
それに、セリナとのこともある……
そんな君がここを離れるとなったら、彼女はきっとその辛さに耐えられないと思うんだ。
だから、やっぱり彼女の中から君の記憶は消さないと可哀相だよ。
君だってそうだよ。
ジャネットのことが忘れられ泣くなるかもしれない。
そうなったら、君も記憶を消したらどうだろう?
お互いの記憶を消してしまったら、辛い想いをしなくてすむよ。」
フレイザーは、エリオットの提案にゆっくりと頭を振る。
「……俺はいやだ。
俺は、どんなに辛くてもあいつを忘れたくない。
初めて会った時のことから、ここを発つその日までのあいつの記憶を全部持って帰りたい。」
エリオットは、フレイザーの顔をじっとみつめ、溜め息混じりに頷いた。
「……君らしいね。
なら、そうすれば良いよ。
君ならきっと耐えられるよ。
あ……ここを離れる前には、皆と写真を撮っておきたいね。」
「この世界に写真なんてあるのか?」
「あるよ、
どこの町だったか忘れたけど、大きな町でみかけたことがあるよ。
きっと、まだ一般的なものじゃなくて、お金持ちくらいしか撮れないものなんじゃないかな?」
「じゃあ、ダルシャに聞いてみればわかるな。
うん……絶対に撮りたいな。
あっちに戻っても、皆のこと、絶対に忘れたくないもんな。」
フレイザーのその言葉に、エリオットは深く頷いた。
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