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「急なことだったから、本当にびっくりしたわ。
でも……とにかく、フレイザーとうまくいったのね。
良かったわ。
これからは女の子のジャネットに戻って生きていくのね。」

ジャックは、どこか照れ臭そうに小さくこくんと頷いた。

朝食を済ませた後、ジャックはセリナを呼び出し、他愛ない話を交わしながら二人はゆっくりと町を散策した。



「セリナ、あそこに座ろう。」

ジャックは公園のベンチを指差し、二人はゆっくりとその場所へ向かった。



「……昨夜、なにかあったの?」

腰掛けるなり、質問を投げかけたセリナに、ジャックの頬は赤く染まっていく。



「俺……じゃない、私……
昨夜……フレイザーのベッドに裸で潜り込んで、抱いてくれって言ったんだ。」

「え…ええっ!?」

セリナは上ずった声を上げて、ジャックの顔をじっとみつめた。



「わ、私も後になって、なんて恥ずかしいことをしたんだろうって……顔から火を吹きそうになった。
でも、あの時は、そんなことしか思いつかなかったんだ。
とにかく、何かしないといけないって思って、すごく焦って……」

「……そうだったの…だから……
それにしても、あなたって本当に思い切ったことするのね。」

「男に抱かれることなんて、私にとっちゃなんでもないことだからな。
でも……そうじゃなかった……」

「どういうことなの?」

ジャックは恥ずかしそうに目を伏せ、ほんの僅かに微笑んだ。



「……商売でやってるのとは全然違ってた。
何度もやって来たことなのに、あんなに緊張して……
それに、面倒臭いとか鬱陶しいなんて気持ちは少しもなくて……
今までに感じた事のない幸せな気分っていうのか……」

「もうっ!ジャック……じゃない、ジャネットったら早速おのろけ?」

「ち、違うんだ!
でも……セリナのおかげで、私はこんなに幸せな想いを感じる事が出来た。
人を愛することがこんなにも幸せなことだって気付かせてくれたのは、セリナだ。
……そのお礼を言いたかったんだ。」

「お礼を言いたいのは私の方よ。
こんなに早く私の夢を叶えてくれるなんて、考えてもみなかったんだもの。
ありがとう、ジャネット!」

セリナはジャックの身体を抱き締め、ジャックも同じようにセリナの身体を抱き締めた。


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