34
*
「えぇーーーーっ!」
「ジャ……ジャックなの!?」
「な、なんだよ!
そ、そんなに驚くことないだろ!」
次の朝、食堂に現れたジャックを見て、皆、あからさまに驚きの声を上げた。
ジャックは、セリナに買ってもらったベージュの花柄のドレスを着て、いつもとはまるで別人のようだったのだから。
「そうよ、皆、失礼よ。
どこもおかしい所はないじゃない。」
「おかしいと言っているんじゃない。
ただ、いつもとあまりに雰囲気が違うから……」
「俺……おまえの顔、こんなにはっきり見たのは初めてだ!
いつも、おまえはあの鬱陶しいフードをかぶってたからな。」
「けっこう可愛いだろ?」
ジャックの隣でにこにこしながら、フレイザーが発したその一言にジャックは顔を赤らめた。
「……言ってくれるな。
なんだ、フレイザー……何か良いことでもあったのか?」
「べ……別に、何もないけど……
そ、そんなことより、早く食事にしよう。」
ラスターの冷やかしに、今度はフレイザーが顔を赤くする。
「……なるほど。
そういうことか……」
意味ありげな笑みを浮かべながら、ダルシャがフレイザーをちらりと見遣った。
「……と、とにかくだな。
今日から、こいつのことはジャネットって呼んでくれ。
もうジャックはいない。
ジャネットだ。」
わざとらしい咳払いを一つすると、フレイザーは淡々とした様子でそう話した。
その隣で、ジャックは俯き加減に顔を傾けたまま、ただ黙りこむ。
「はいはい、わかりました。
そっか、なるほどな。
今日から、ジャックは女に戻ったってことなんだな。
フレイザー……鼻の下が伸びてるぞ。」
「ど、どこが!
俺はいつも通りだ!」
「まぁまぁ……良いじゃないか。
とにかくめでたいことだ。
フレイザー、これからもジャック……いや、ジャネットのことを大切にしてくれよ。
おぉ、そうだ!
二人の未来を祝して、乾杯といこうじゃないか!」
「あんたは、なんだかんだ言って飲みたがるんだから……」
口ではそんな文句を言いながらも、ラスターの顔には晴れやかな笑みが宿っていた。
「かんぱーい!」
皆の明るい声と、グラスを合わせる音が食堂に響き渡る。
- 582 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
トップ
章トップ