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「え……そ、そうか。
ジャ……ネット……だな。うん、わかった。
そうしてもらえると、俺も嬉しいよ。
……でも、どうしたんだ?
どうしてこんなに思いきったことを……」

「それは……」

「……あ……俺のせいか?
もしかして、最近、俺がラスターとばっかりいたから?
あ、でも、あれは違うんだ!
俺……おまえともっと親しくなりたって思うんだけど、その方法がなかなかわからなくて……それでだな……顔を合わせるのが……その……」

フレイザーは照れ臭そうに言葉を濁した。



「わかってる……
あんたが俺…じゃない、私のことを考えてくれてることはわかってた。
そりゃあちょっと寂しかったけど……
フレイザー……でも、それとは違うんだ。
私な……以前から、セリナに夢を託されてたんだ。
セリナは、誰かを好きになることは出来ないから……だから、その分、私に幸せになってくれって。
フレイザーを愛して愛されて……セリナの分も幸せになってほしいって……
その言葉を今日また言われたんだ。
今日の言葉は、この前よりももっと深く俺……私の胸に突き刺さった。
セリナが適当に言ってるんじゃないってことが、身に染みてわかったんだ。
……フレイザー……
誰も好きになっちゃいけない者の悲しみがあんたにはわかるか?
……私もずっとそう想ってた…
こんな汚れた私は誰も好きになっちゃいけないし、もちろん、誰かに好きになってもらえることもないって想ってた。
だから……あんたのことを好きになった時も、私は必死にその気持ちを打ち消した。
私は人を好きになっちゃいけないんだって……そんな資格はないんだって……」

淡々と独り言のように話していたジャックの言葉がだんだんと震え出し、鼻にかかった声に変わっていく。
フレイザーは、何も口には出さず、ただジャックの長い話に耳を傾けた。



「あんたのことを好きになった時はとても苦しかったけど……
だけど、誰かを本気で愛せるってことがどれだけ幸せなことかって……私、ようやくわかったんだ。
……しかも、その気持ちを受け入れられた。
私は、本当に幸せだ。
これ以上、幸せなことはない。
フレイザー…ありがとう!
本当にありがとう!」

身を翻し、向き直ったジャックがフレイザーの首に抱き着く。
フレイザーは、それに応えるかのように、ジャックの細い身体をきつく抱き締めた。


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