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「ジャック……セリナは大丈夫なのか?」

ジャックが部屋に戻るなり、フレイザーが声をかける。



「あぁ、今、エリオットが帰って来たし……
確かにショックは大きかっただろうけど、頭の中で整理はついてるみたいだ。」

「そうか……
まぁ、セリナはしっかりしてるから大丈夫だろうけど……
でも、やっぱりちょっと心配だな。」

そんなことを話しながら、二人は長椅子に腰掛けた。



「……あの……フレイザー……」

「なんだ?」

「えっと……セリナが……」

「セリナがどうかしたのか?」

「だから、その……セリナが……」

そう言ったっきり、ジャックは口篭もった。
フレイザーを目の前にすると、セリナと話したことを話したくてもどこか気恥ずかしく、そして、セリナの心情が辛くてジャックにはとうとう話すことが出来なかった。



「ジャック……セリナがどうかしたのか?」

「な、なんでもない…!」

「なんでもないって……」

「だ、だから……セリナが可哀相だってことだ。」

そう言って立ち上がり、ジャックはそのまま浴室に向かった。
フレイザーは怪訝な顔をしながら、ジャックの背中を目で追うばかりだった。







(……何やってるんだろう、俺……)



結局、フレイザーとはろくに話もしないまま、疲れたから寝るとたぬき寝入りを決めこんだジャックは、ベッドの中でセリナの言葉を想い返していた。

フレイザーと愛し合って幸せになってほしいと言ったセリナの言葉が、どれほど重いものかということをジャックは理解していた。



(それなのに、俺はフレイザーと話もしなかった。
確かに、フレイザーは俺のことを好きだって言ってくれたけど……
でも、このままじゃ、一体いつになったら本当に向き合えるのか……
あぁ、なんでさっきあのまま話してしまわなかったんだろう……
あの流れのまま話してたら、自然に話せたのに……)

ジャックはベッドの中で、ぐっと唇を噛み締めた。


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