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「ど、どういうことなんだ!?
護り人が巫女を殺すなんて……」
「わしも詳しいことはわからないんだ。
もしかしたら、ただの噂かもしれない……わしにはそうは思えないがな。
だけど、本来巫女を護る立場の人間が、巫女を殺すなんてどう考えてもおかしな話だ。
護り人だっていって近付くだけで、本当は護り人じゃないのかもしれないし、とにかく詳しいことは何もわからないんだが、物騒な奴がいることだけは心の片隅に留めておいてくれ。」
「なぁ、爺さん……
そもそも護り人っていうのは何なんだ?
どういう人間がどういうことで護り人になるんだよ?」
老人は、ラスターのその質問には答えず、セリナの方に向き直った。
「セリナ、おまえさんもそのことを知らないのか?」
「え、えぇ……知りません。
私が知ってるのは、護り人と呼ばれる人がいるということと、たとえば子供がほしい時にはその人が相手を探して来てくれるということだけです。」
「たった、それだけしか聞いていないのかい?」
セリナは伏し目がちに小さく頷く。
「そうか……
まず、護り人っていうのはほとんどが巫女の子供やその血縁の者だ。
つまり、巫女の力を受け継いでいない男子だな。
それと、巫女の力を受け継がなかった女子が産んだ子供がほとんどだ。」
「では、大きな意味でいうと、巫女とは親戚のような者達……ということですね。」
「その通りだ。
みつけた巫女が成人した大人なら、子供を授ける手伝いをする。
相手を探して来るんじゃなくて護り人が相手をするんだ。
わしらの役目は、巫女を護ること…それはすなわちその血を絶やさないことでもあるからな。」
「ねぇ、おじいさん……巫女は絶対に護り人の子供を産まなきゃだめなの?
たとえば、他に好きな人がいてもそれは許されないことなの?」
老人はエリオットに向かいゆっくりと頭を振る。
「残念ながらそれは無理だ。
それは誰にとっても不幸なことだからな。」
「どうして?どうしてそれが不幸なことなの?
好きな人と薄ばれる方が幸せなんじゃない?」
老人は、再び頭を振った。
「巫女と交わった男はそのまま死んでしまうんだ。
だから、子を作る時は顔も見えない暗がりで交わるんだ。
顔を見たり親しく話してしまったら、巫女も辛いだろう?」
老人の衝撃的な話に、誰も何も言うことが出来なかった。
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