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「こ、これが願い石…!
しかも、こんなに…!?」
老人は目を見開き、感動に唇を戦慄かせた。
「願い石は一つだけです。
あとは、全部双子石。
……どうですか?
なにか感じますか?」
「い、いや、全然……
やっぱり、護り人は石には反応しないみたいだな。」
鉛の箱の中に収められた願い石と双子石に、老人の目は釘付けになったまま、独り言のように呟く。
「あ……もう良い。
早く閉じてくれ。
こんな大切なもの、他所じゃ容易に見せるんじゃないぞ。」
「わかってます。
あなたが護り人さんだとわかっているからお見せしたんです。」
「しかし、鉛の箱とは考えたもんだな。
それにこの箱は普通の箱じゃないな。
鉛でこんなに軽い箱が出来るわけがない。
魔法使いにでも作らせたのか?」
「え?えぇ……よくわかりませんが、この箱は魔法使いが願い石を保管していた箱なんです。」
「そうか、やっぱりな……
きっとこの箱には、なんらかの魔法もかけられてるんじゃないかって思う。」
今まで考えてもみなかった話に、六人は感心した風に頷いた。
「とにかく、あんたら、セリナのことを頼んだぞ。
最近は妙な奴がいるって話だし、十分、注意してくれよ。」
「妙な奴……?
どんなやつなんだ?」
「……巫女を狙う奴だ。」
「そんなの、以前からいたんだろ?
セリナは現に捕まってたんだから……」
ラスターの言葉に、老人は瞳を伏せゆっくりと頭を振った。
「……そいつらは願い石を探すために、巫女を利用しようとする奴だろう?
そうじゃないんだ。
……巫女を殺すことを目的とした奴がいるって話なんだ。」
思い掛けない老人の言葉に、六人は息を飲んで老人をじっとみつめた。
「……どういうことなのです?
巫女を殺す…だなんて……」
皆の気持ちを代表するように、ダルシャが質問を投げかける。
「わしらにも詳しいことはわからない。
数年前、耳にした話なんだが、なんでもその男はただ巫女を殺すためにあちこちを旅してるって話だ。」
「巫女になんらかの恨みがあるということですか?」
「……おそらくはそうだろうな。
そうとでも考えなけりゃ理由がわからん。」
「ずいぶんおかしな奴がいるんだな。
だけど、巫女はこの世界にもそうたくさんはいない。
みつけることなんて出来るのか?」
「……出来るだろうな。
なんせ、そいつは護り人だということだから……」
重苦しい表情を浮かべた老人のその言葉に、部屋の中は緊迫した空気に包まれた。
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