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「うん、それが良いよ!
おばあさんは絶対に喜んで歓迎してくれるよ!」

「……ありがとう。
いろいろ考えてくれて、本当にありがとうな。
実はな……俺が一番怖かったのはイリヤのことだったんだ。
……あいつが出て行ったのは、少しでもここの暮らしを楽にするためだ。
自分がいなくなれば食い扶持が減るとか、あいつの部屋を子供達が使えるようになるとかそういうことを考えたんだろう。
俺はそんなあいつの気持ちをわかっていながら引き止めなかった。
こんな狭くて貧乏な家にいるより、一人の方があいつも気楽に暮らせる…なんて自分に言い聞かせて……
だけど、あいつは昔から人付き合いが苦手だったし、この村を出たこともほとんどないんだ。
あいつがどれほど心細かったか、苦労しているかってことをわかっていながら、俺は……
なのに、困ったからってあいつの所に行って良いものかって……
いや、本当は良いはずがない。
だけど、今はそこしか頼れる所はない。
あいつにどんなに怒鳴られようがなじられようが、俺はそれを受け止めるしかないんだよな……」

アンディはそう話すと、そのまま力なく俯いた。



「おじさん…イリヤはそんなことしないよ。
そりゃあ、確かに苦労はしたと思う。
だけど、イリヤが家を出たのはおじさんの推測通りみんなのためで、イリヤには家計を助ける力がなかったから残念だったけどそんな方法を取ったんだと思うんだ。
でもね…今のイリヤには家族を助ける力があるんだよ。
まだおばあさんの家に住まわせてもらってるけど、おばあさんのレシピ通りに作れるのはイリヤだけなんだ。
ボクもしばらくケーキ作りを手伝ってたけど、エレのケーキは火加減がとても難しいんだ。
おばあさんの話によると、イリヤはすごく覚えが早いんだって。
だから、おばあさんはイリヤのことをとても信頼してるんだよ。
でも…本当の家族からも信頼されたら、イリヤはきっともっと嬉しいと思う。
それに、おじさん達があそこへ行ったら、イリヤは家族と一緒に暮らせるようになるんだ。
そのことをイリヤが喜ばないはずがないじゃない。」

晴れやかな顔で話すエリオットに、アンディは瞳を潤ませ唇をきつく噛み締める。



「あいつがそんな風に……
そうか……そうか……」

溢れ出る涙を拭いながら、アンディは何度も何度も頷いた。


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