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「……偽物と全く同じに見えるね。
ジャック、そこの引出しからハンマーを持って来ておくれ。」

「ハンマーを……!?」

ジャックは、サンドラの意図を知る事のないまま、言われた通りにハンマーを手渡した。



「今度は割れないでおくれよ。」

サンドラは、三人の見守る中、頭上高くに振り上げたハンマーを願い石に振り降ろした。



「つ……」

サンドラは腕を押さえて顔をしかめ、弾かれたハンマーが空を飛んだ。



「おばあさん、大丈夫!?」

エリオットが上体を起こし、サンドラを心配そうにみつめた。



「あぁ……大丈夫さ。
だけど、驚いた。
あの話は本当だったんだね。
本物の願い石は、どんなに強く叩いてもびくともしないんだね。」

「……すごいもんだな。
あんなに叩いても傷一つついてないぜ。」

フレイザーは願い石を手に取り、まじまじとそれをみつめた。



「フレイザー……お願いがあるんだ。」

やけに真剣な顔つきでそう言うサンドラに、フレイザーは驚いたような顔を向けた。



「なんだい?」

「この願い石はエリオットに使わせてやってほしいんだよ……エリオットにはとても良くしてもらったからね。
だけど、母さんの話によると、魔法使いが願い石に願いをかけると命を落とすって言われてるらしいんだ。
母さんもその話が真実なのかどうなのかはわからなかったみたいだけど、本当だったらえらいことだ。
だから、どうかそれをエリオットのために使ってほしいんだ。
エリオットの幸せのために使ってやってほしいんだ。
あんたを見込んで頼むよ、どうかお願いだよ。」

「おばあさん……」

エリオットは潤んだ瞳でサンドラをみつめ、フレイザーはサンドラに向かってゆっくりと頷く。



「わかってる。
これは、必ずエリオットのために使う。
約束するよ。」

「ありがとうよ、フレイザー。
悪い奴に取られないようにしっかり守っておくれよ。
……そうだ、この箱に入れて持ってお行き。
この鉛の箱は、願い石の存在をたとえ石の巫女にだってわからないようにしてくれるらしいんだよ。」

「そうなのか!」

フレイザーとジャックは、セリナが石の存在を感じなかった理由をその時、ようやく理解した。


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