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『この大陸に渡って来てしばらくした頃、私は偶然に願い石を手に入れました。
私は迷いました。
願い石に、願いをかけるべきかどうかを……
もしも、私の願いが叶えられ、普通の人間になれたなら……
そうすれば、私はローランやあなたと幸せに暮らせるかもしれない……
だけど、心配なことがありました。
私は当時すでにローランより遥かに…ローランの両親よりも年上だったのです。
魔法使いの寿命は長く、老化の速度も人間とは違います。
ですから、見た目にはローランと変わりなく見えましたが、もしも、私が人間になったら、急に年を取ってしまうかもしれない。
そうなれば、ローランの愛はいっぺんに冷めてしまうかもしれません。
それだけではありません。
魔法使いが願い石に願いをかけると、その途端に死んでしまうという話も聞いていました。
ですから、私にはどうしてもそれを使うことが出来なかったのです……』



リューラはこの町に住み、一人ひっそりと暮らしていたが、ある日、いつものようにフォスターの港で海をみつめていた時、船から降り立つローラン達の姿を見かけ、慌ててリューラは町を離れた。
ローランやサンドラには会う事は許されないと自分を抑え、リューラはずっと耐えていた。
しかし、どうにもその想いが抑えられなくなり、町に様子をうかがいに行った時、ローランが亡くなったことを知った。



『……なぜ、もっと早くに会いにいかなかったのかと、私は悔やみ、一晩中泣きました。
だけど、死んでしまった人は魔法でも願い石でももうどうすることも出来ません。
私と関わってしまったために、ローランの人生を狂わせてしまった……
あなたのことはとても心配でしたが、私は怖かったのです。
私が関わることによって、あなたをも不幸にしてしまうことが……』



リューラの声は次第に震え、やがて嗚咽に変わってしばらく途切れた。



『あなたに必要かどうかはわかりませんが、この願い石でどうか幸せになって下さい。
これから先も私はあなたに会うことはありませんが、どこにいてもあなたのことを忘れることはありません。
サンドラ…一生、変わらずあなたのことを愛していますからね。』

サンドラは、リューラのその言葉を聞き、流れる指で涙を拭った。



「おばあさん…良かったね。
お母さんにこんなに愛されて……」

「……そうだね。
それなのに、私は母さんのことを疑いそうになった……」

「仕方ないよ。
それに、お母さんはそんなことじゃ怒らないよ。」

エリオットは、サンドラのかたを優しく抱き寄せた。



リューラは、願い石の本当の隠し場所、そしてこの家にかかっている魔法についても語っていた。



「じゃあ、エリオット……
明日は頼んだよ。」

「うん、任しといて。」




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