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「おめでとう!」
「お疲れ様!」
エリオット達はグラスを合わせ、エレのケーキの販売店が決まったことを祝い合う。
「あ、僕はもう良いよ。
お酒にはすごく弱いんだ。」
「男のくせに何を言ってるんだい。
そんなんじゃ、女の子にもモテやしないよ。
さ、ぐいっとやりな!」
強引にサンドラに酒を注がれ、イリヤは仕方なく酒を流しこんだ。
「本当に、あんたのおかげだよ。
あんたがここへきてくれてから良いことばかりだ。
家の中は綺麗になったし、イリヤもここに住んでもらえることになったし、ケーキも売れるようになった…
あんたはさながら天使様だね。」
「やめてよ、おばあさんったら大袈裟だよ。」
「本当に、君達のおかげだよ。
僕もフレイザーやジャックに会わなかったら、あれからどうなってたかわからないんだから……
願い石なんてなくたって、幸せになれる方法はいくらでもあるんだな……」
イリヤはすでに赤い顔をして、夢見るような口調で呟く。
「……そうだね。
皆で力を会わせれば、願い石なんてなくたってきっと幸せになれるんだよ。
明日からも頑張ろうね。
ボクはずっとはいられないけど、いられる間は精一杯頑張るからね!」
「ありがとうよ。」
「……でも、エリオット達は願い石を探してるんだろ?
手掛かりはみつかったのかい?」
「え…あぁ、これからぼちぼち探すよ。」
イリヤのことを信じないわけではなかったが、エリオット達は念の為、願い石のことはイリヤには黙っていた。
「願い石って、一体、どんなものなんだろうね。
僕の村のおじいさんの話じゃ、石というより玉なんだってさ。
透き通って綺麗なものらしいよ。」
「へぇ…そうなんだ。」
エリオットは何も知らない振りをして相槌を打つ。
「それに、脆いように見えてとても強いらしいよ。
どんなに高い所から落としても、ハンマーで叩いても割れないんだって。
だけど、願いをかけたらその途端、粉々に砕けてしまうっていうんだから、本当に不思議な石だよね。」
「イリヤ、今の話は本当なのかい?」
「本当だと思うよ。
その話を教えてくれたのは、石の巫女に関わりのあるおじいさんだからね。」
「……そうなのかい。」
「イリヤ、君、もう眠いんじゃない?
目が半分ふさがってるよ。」
「うん…すごく眠い……」
「じゃあ、もう寝た方が良いよ。」
エリオットは、イリヤの手を引き、寝室に送って行った。
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