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「えーーーっ!本当なの!?」
エリオットを始め、イリヤもサンドラも、そしてジャックもが、フレイザーの報告に目を丸くして驚き、そして、その顔はすぐに晴れやかな笑顔に変わった。
「本当だとも。
ケーキを販売してくれるのは、フォスターの商店街でも一際大きな果物屋だ。
場所も良いし、あそこなら間違いなく売れるぜ!」
「そうなの!?
良かったね!おばあさん、イリヤ!」
エリオットとサンドラは、手を取り合って喜びを噛み締めた。
「それで、果物屋のジョーンズさんには二割の手数料を払う事になったんだが、ジョーンズさんがあの値段は安過ぎるって言って、もう少し高く売るつもりみたいだから、儲けはそれ程減ることはないはずだ。」
「それは良いけど、値上げしても売れるかなぁ?」
イリヤが心配そうな顔でフレイザーに訊ねる。
「あぁ、絶対、大丈夫さ!
明日の朝から、早速、取りに来てくれるからな。」
「ようし!じゃあ、今夜は夜なべしていつもより多めに作ろうか!」
「およし。
最初からそう無理をすることはないさ。
そんなことより、今夜は皆で前祝いといこうじゃないか。」
「あ、残念だけど俺達はすぐに戻らなきゃならないんだ。」
「また、宿屋のおやじさん?」
フレイザーは、エリオットの問いかけに苦笑する。
「そういうこと。
おやじさん、俺達の夕食を作るのが楽しみなんだ。
だから、戻らないと可哀相でな…
でも、おばあさん、実はそういうことになるんじゃないかと思ってこれを買って来たんだ。」
フレイザーは、袋の中から酒の瓶を取り出した。
「おやまぁ……」
サンドラの目は酒瓶に釘漬けになり、大きな口を開けていた。
「今夜は三人でやってくれよ。
俺達もまた明日にでも来るからさ。」
「ありがとうよ、フレイザー。
あんたには本当に何から何まで世話になったね。」
「俺は何もしてないよ。
おばあさんのレシピと、イリヤとエリオットが頑張ったおかげだ。
それじゃあ、また明日な!」
ジャックとフレイザーは三人に手を振り、サンドラの家を後にした。
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