「ラスター、ちょっと…」

今にも貴族の青年に向かって怒鳴り散らかしそうなラスターを、フレイザーは少し離れた場所へ連れ出した。



「俺は絶対いやだからな!
あんな奴とは、絶対に一緒に行かない!」

「まぁ、待てよ。
おまえ、セリナのことが心配なんだろ?
仮に…セリナがエルフの所に捕まってるとするぜ。
しかし、俺達三人じゃ、そこへ辿りつく前に魔物にやられてしまうかもしれないし、万一辿り着けたとしてもエルフ達に敵うと思うか?
今は、自分のことよりもセリナのことを考えるべきなんじゃないか?
そうだ!言葉は悪いけど、利用させてもらうと思えば良いんじゃないか?
セリナさえ助け出したら、すぐに別れれば良いじゃないか。
な!」

フレイザーは、そう言ってラスターの肩に手を置いた。
ラスターはしばらく俯いて考えこんでいたが、やがて決心が決まったのか、きっぱりした表情で顔を上げた。



「よし、わかった!
確かにあんたの言う通りだ。
いけ好かない奴だけど、しばらくの間だもんな。
我慢するよ。」

「ようし、決まりだ。
とにかく、俺もエリオットも頼りにならないから、あいつにはいてもらった方が良い。
それだけのことだから、気にするなよな。」

「あぁ、わかってる。」

二人は青年の元に戻り、同行する事を伝えた。




「賢明な決断だな。
私の名はダルシャ。
さっき見てもらった通り、剣の腕には覚えがある。」

「ダルシャ、よろしく頼むよ。
俺はフレイザー、こっちはラスター、それと…」

「エリオットだね。
さっき聞いたよ。
君達はセリナとかいう女の子を探してるんだってね。」

「エリオット、話したのか?」

「う…うん。
いけなかった?」

「あんまりぺらぺら喋るなよな!」

ラスターは、眉間に皺を寄せながら、声を荒げてそう言い放った。



「ご…ごめん…」

その様子を見ていたダルシャが、口許で人差し指を左右に小さく揺らしながら舌を鳴らす。



「女の子をいじめるもんじゃないよ。」

「苛めてなんかないさ!」

「そうだそうだ、ラスターはいじめてなんかない。
さ、とにかく早く出発しようぜ!」

ダルシャを睨みつけるラスターに回れ右をさせ、フレイザーは彼の両肩を押して前に進ませた。



(こいつは先が思いやられるな…)

フレイザーは、心の中で小さな溜息を吐いた。


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