「わぁ!地図じゃないか!」

エリオットは、興奮した様子で地図に食い入るように見入っている。
しかし、その表情はすぐに難しいものに変わった。



「ねぇ、ラスター、今、僕達がいるのはどこかわかる?」

「どこって…ここにヨギラって書いてあるじゃないか。」

ラスターが指差した先に書かれた文字は、フレイザーとエリオットには読めないものだった。



「……まさか…あんたら字が読めないのか?」

怪訝そうな顔をするラスターに、フレイザーは肩をすくめて微笑んだ。



「もしかすると…イラズルの毒じゃないのかもしれないな。
イラズルの毒で、文字まで忘れたなんて話は聞いたことがない。
あんたら…一体、何があったんだ?
本当に何も覚えてないのか?」

「……残念ながら、何も覚えてない。」

「もしかしたら……」

フレイザーとラスターの視線が、エリオットに注がれた。



「もしかしたら、僕達、魔法で記憶を消されたのかも…」

エリオットは、独り言のように小さな声でそう言った。



「魔法で記憶を?
なんでそう思うんだ?」

「わからない…ただ、そんな気がしただけ。」

「そうか…あんたらには何か深い事情があるのかもしれないな。」

「それはともかく、今は今後の行き先を考えようぜ!
ここが今いるヨギラの町なんだな。
じゃあ、普通はこの街道沿いに行くんじゃないか?」

フレイザーはそう言って話をそらせ、地図を指差した。
ヨギラの町からエアロスの町までには脇道が記されていない。
もちろん小さな道はあるだろうが、それらはさして主要な道ではないということだ。
エアロスの町から先は、二股に分かれていた。



「そうだろうな、おかしな道に入りこんだら、却ってややこしいことになりかねないからな。」

「でも、その子は悪い奴らに追いかけられてるんだろ?
だったら…」

「セリナはちょっと変わった子だから…」

「あ…そっか…」

「じゃあ、明日からこの街道沿いに進んで行く事にしよう。」

三人は旅に必要なものを買い揃え、明日からの旅に備えて、その晩は早めに休んだ。


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