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「ここまで来たらもうすぐだな。」
「……そうだな。
フレイザー、疲れてないか?
足は痛くないか?」
「あぁ、俺はもうなんともない。
旅に出てからの方が体調が良くなったって言ったろ?」
馬車を乗り継ぎ、数日かかってようやく辿り着いたその町は、ヘイレンの手前の小さな町だった。
ゆっくり旅をしようと言ったものの、エリオット達とはヘイレンで落ち合うと約束していたことをフレイザーは思い出し、待たせては悪いとそれからは出来る限り先を急いだ。
その甲斐あって、二人は思ったよりも早く進む事が出来た。
「ブライアンは馬車に乗る金を持ってないんだろ?
だったら、そんなに急ぐ事ないじゃないか。」
「でも、皆を待たせるのは悪いじゃないか。」
「……また、それか。
あんたはなんでそう仲間のことばかり気にする?
ダルシャに金を出してもらってるからか?」
「そうじゃない。
そりゃあ、金のことが全く気にならないわけじゃないけど、今は俺は払いたくても金がないんだからそれは甘えるしかないと思うんだ。
ただ…迷惑をかけたくないっていうか…ほら、誰かを待たせてると思ったらやっぱり急がなくちゃって思うじゃないか。
それって、おかしなことか?」
「……そういうもんかな…
俺は、今まで…仲間ってもんがいなかったから…」
(あ……)
「ま、たいしたことじゃないさ。
そんなことより、とにかく宿に行ってゆっくりしようぜ。」
ジャックの気持ちを察し、話を逸らしたフレイザーは、ジャックの背中を押し出すように叩く。
町の中心部に向かって少し歩くと、すぐに一軒の宿屋が見え、二人は迷わずその宿に泊まることを決めた。
「フレイザー、夕飯まで少し休んだ方が良いぞ。
今日はいつもよりずいぶん歩いたからな。」
ジャックは、フレイザーにお茶を差し出しながら、心配そうな顔を向けた。
「大丈夫だって言ってるだろ。
おまえこそ、休めよ。」
「俺はこのくらい全然平気だ。
……夕飯まで、ちょっと町を見て来る。」
わざわざ疲れていないことを証明するかのように、ジャックは部屋を飛び出した。
ジャックの後姿を目で追いながら、フレイザーは小さな溜め息を吐き出した。
(……ちょっと疲れたって言ってやれば良かったかな…)
なかなかうまく通じ合えないジャックとの距離感に、フレイザーはそっと頭を抱えた。
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