「それじゃあ…」

しばらくの間を置いて、フレイザーは笑いを押し殺した声で呟いた。



「エリオットは、男じゃなくて女が良いな!」

「ええーーーーっっ!」

「わぁ!」

フレイザーのみつめる前で、エリオットは少女の姿に変わっていく…



「し…信じられない…」

体型はほぼ変わらなかったが、それはエリオットが元々小柄だったせいだろう。
しかし、その身体付きは明らかに変わっていた。



「……な、嘘じゃなかっただろ?」

エリオットは自分の口から飛び出した可愛らしい声に驚いた。



「わぁ〜!声もすっかり女の子みたいだな!
なぁ、おまえ…髪、伸ばせよ。
きっともっと可愛くなるぞ!」

フレイザーははにかみながら、エリオットをみつめた。



(なんだ、こいつ…気色悪いな…)



「あ…!そうだ!
その格好じゃ、なんだな。
服装も女の子らしくしないと…あ、メイドなんてどうだ?」

「やだよ、僕、どうせなら魔法使いの方が良いな。」

「魔法使いねぇ…ま、いっか。
こいつの服装を魔法使いの少女風に…いや、服装だけじゃなくこいつを魔法使いにしてくれ!」

フレイザーは、グリーンの宝石を手に持ってそう言った。
それと同時に、エリオットの服装が今までと変わり始める…着ていた垢抜けないTシャツはローブに変わり、頭には三角帽子、腕には杖を持っていた。



「うわぁ、いかにも…って感じの魔法使いだな!
でも、けっこう似合ってるぜ!」

「そう?見てみたいな!
鏡ないかなぁ?」

「こんな所に鏡なんてあるわけないだろ?」

二人が大きな口を開けて笑うその時、近くの茂みに動きがあった。
それに加えて、あたりに響く唸り声…



「……エリオット…なんかいやな感じしないか?」

「……そうだな。」



二人の予感は的中した。
次の瞬間、茂みの中から飛び出して来たのは、動物とも人間とも言えない…
鮫のような鋭い牙を持ち、長い鍵爪はまるで刃物のような、今まで二人が見た事もないようなモンスターだった。
名前さえもわからないそのモンスターは、殺意に満ちた瞳をぎらつかせ、今にも二人に飛びかかろうとしている。



「ど、ど、どうしよう…エリオット…」

「そ、そ、そんなこと…」

二人が対抗策を思いつく間もなく、モンスターは固まる二人の元に襲いかかった!


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