「ダルシャ、やっぱり馬車を待った方が良かったんじゃない?」

エリオットの言葉に、ダルシャは顔をしかめた。



「でも、この道は近道だと聞いた。
あんないいかげんな御者の馬車より、きっと、私達の方が先に町に着くさ。」



具合の悪いラスターとセリナを置いていくことにダルシャは不安を感じていたが、宿には他の泊り客も大勢いる。
さらに、部屋には鍵をかけて絶対に外には出ないようにとも言いつけておいたから大丈夫だろうとは思いつつも、ダルシャはセリナのことが心配だった。
だからこそ、出来るだけ早く用事を済ませ帰ろうと考えたのだが、ヒッコリー行きの乗り合い馬車が来たのは定刻よりも一時間も過ぎた時だった。
しかも、途中で車輪がおかしな音を立て始め、修理のために一旦停止。
一時間程で着くと言われていたヒッコリーの町に着いたのは、三時間近く経った頃だった。

ヒッコリーは、噂通り、賑やかで大きな町だった。
町に着くと、早速、情報収集をしながら二人は店を回り、必要なものを買いそろえた。
昼食のために立ち寄った町で尋ねてみると、やはり乗り合い馬車の評判は悪く、苦情が絶えないとのことだった。



「そうだと思った。
あんないいかげんな馬車は初めてだ。
エリオット、帰りは歩いて帰ろう。」

「ええーーーっ!
こんなに荷物があるのに?」

「それなら、近道があるぜ。
馬車が来る時間にはまだ少しあるし、どうせ今日も遅れて来るだろうから、歩いて帰った方が良いかもしれないな。」

店の主人のその一言で、ダルシャは歩いて帰ることを決めた。
エリオットは魔法で帰ることを提案したが、何でも魔法に頼るのは良くないと説教を受けただけだった。
ダルシャは、歩いて帰っても馬車より早くに着いたということを実証するため、半ば意地になっていたのだ。

教えてもらった近道は、大人が五人ほども並んだらいっぱいになるような森の中の細い小道だった。
しばらく進むと三叉路が二人の目に映った。




「あれがおじさんの言ってた三叉路だね。
確か、あそこを右に曲がるんだよね。」

「そうだ。
そのまままっすぐ行けば街道に出るようだな。」

二人が話していると、後ろから足音が聞こえ、三人の男が駆けて来た。
その後ろを中年の女性と若い男が少し遅れながら早足で着いて来る。


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