「ラスター、大丈夫?」

「大丈夫なわけないだろ!
向こう行けよ!」

甲板の片隅で壁にもたれ、青い顔をしたラスターが苛立った声で言い放つ。



「ダグラスさんに薬をもらうつもりだったのに……」

「あの爺さんが魔法使いじゃない限り、この気持ち悪いのが治せるわけないさ。
きっと、フレイザーだって今頃は俺みたいに苦しんでるはずだ…」

今のラスターにはそう思うことだけが、心の支えだった。
フレイザーが、ダグラスの薬のおかげで全く酔わなかったことを知らないのは、彼にとって幸せな事だった。



「まぁ、そのくらい元気なら大丈夫だろう。
スエルシアへは六日だから、イグラシアに行くよりはほんのわずか楽なはずだぞ。」

「確かに一日でも早くこの忌々しい船から下りられるのはありがたいことだな。
とにかく、俺は一人になりたいんだ。
あんたらはどこか他所へ行ってくれ。」

「はいはい、わかりましたよ。
じゃ、セリナ、ダルシャ、あっちに行こうか。」

三人は、手を振りながらラスターの傍を離れた。

−−それからスエルシアに着くまでずっと、ラスターの酷い船酔いは治ることはなかった…








「うっぷ……足がうまく動かねぇ…」

ようやく港に降り立ったラスターは、船を降りても身体の揺れがおさまらず、おぼつかない足取りでまるで老人のようによろよろと歩く。
見かねたダルシャはそんなラスターに肩を貸し、ラスターも今回はよほど具合が悪かったのか、すんなりとその行為を受け入れた。



「しばらくどこかで休むしかないな。
町へは馬車…」

「だめだ!今は馬車なんかとても乗れない!」

ラスターの状況ではそれももっともだと考え、四人は町まで歩いて行く事にした。
幸いなことに、小さな町がすぐ近くにあることがわかり、四人はその町を目指した。

宿に着くと、ラスターは何も口にしないまますぐに横になったが、次の日になっても、ラスターの容態はあまり回復しなかった。



「この分じゃ、もう何日かかかりそうだな。
この先に大きな町があるらしいから、私はそこでちょっとそこで情報収集がてら、買い物をして来よう。」

「僕も行くよ!」

「だが、私達が出掛けてしまうと……」

「大丈夫よ。
ラスターのことなら私がちゃんと看てるし、ここから出ないから、あなた達は安心してでかけて来て!」


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