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「フレイザー、実は、昨夜、カインさんがこの石をわしに返すと言うてくれたんじゃ。
じゃが、わしはもうこの年じゃ。
しかも、子供もおらん。
双子石がなにかの役に立つことがあるかどうかはわからんが、どうせならあんたにもらってもらった方が良いんじゃないかと思ったんじゃ。」
「だけど……」
「俺の村の者達は、ダグラスさんの先祖に助けられた。
そして、あんたらのお陰で俺はここへ来ることが出来た。
つまり…あんたらのかげで俺は人間への信頼感を持てたんだ。
だから、もうこの石はいらない。
こんなものがなくても、俺はあんたらへの信頼と友情は揺るぐことはないからな。
そういうわけだから、フレイザー、さぁ、受け取ってくれよ!」
カインは、フレイザーの手の中に双子石をねじこんだ。
石を手に、困惑した表情を浮かべるフレイザーに、ダグラスやリュシーは微笑みながら何度も頷く。
「……わかったよ。
カイン、ありがとう!
この石はありがたく受け取らせてもらうよ。」
「嬉しいよ、フレイザー!」
三人は、何度も振り向きながら、二人の獣人に手を振って山を降りた。
*
ロンダリンの町に着いた三人は、ゆっくりと夕食を採りながら、これからの予定について話し合った。
宿の主人の話によると、この先にルッチーニという港町があるとのこと。
そこからは、スエルシアへの船もこの大陸内への船もあるらしい。
三人は、とりあえず、次の朝、ルッチーニに向かう事にした。
*
「ここがルッチーニか…
賑やかな町だな。」
「まずは、船の運航表を見に行くとしましょうか。」
運航表を調べた所、運良く三日後にフーラシアを経由してスエルシアへ行く船があることがわかった。
ダルシャの屋敷のある町の近くへ着く船は、二日に一度出航しており、次の出航は明後日だった。
「残念だけど、フレイザーさんは一緒には行けないわね…」
「そうですね。
着いて行きたいのは山々なんですが、三日後の船を逃したら、また一ヶ月待たないといけませんから。」
「フレイザーさん、心配はいらん。
わしが間違いなくリュシーさんをエスコートするからな。」
ダグラスは、おどけながら大袈裟に胸を張った。
「頼みましたよ、ダグラスさん!」
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