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「もちろんだ!
今日から、あんたはここの住人だ。
遠慮はいらないぞ。
家が出来るまでは、ここにいたら良い。」
「ありがとう、アルディさん。」
アルディは、快くカインの受け入れを承諾してくれた。
獣人の数は少なくなっていく一方だ。
そんな現状でのカインの出現は、アルディにとっても嬉しい出来事だったのだ。
「アルディ、カインに良い嫁さんもみつけてやってくれよな!」
「お、おいっ!フレイザー!」
慌てるカインの鼻先が赤くなっていた。
「任せとけ!
俺に心当たりがある。
今夜にでも会わせてやるよ!」
その晩は、カイン達を歓迎する宴が催された。
セリナやエリオットが一緒に来ていないことで少し沈んでいたカークも、リュシーを気に入りすっかり機嫌を直した。
ダグラスは、獣人達からこの山の薬草の話を熱心に聞いていた。
アルディの計らいでカインの席の近くには独身の女性達が取り巻き、カインは緊張でがちがちになっていた。
「フレイザー、奴を見ろよ。
女性達と目も合わせられないみたいだぞ。」
カインの様子を見ながら、アルディは込み上げる笑いを必死で噛み殺す。
「仕方ないさ。
彼の村には、少人数の住人しかいなかったらしいし、同世代の女はいなかったらしいから。」
「そうか…
獣人達はどんどん少なくなっているのだな。
我々は人間よりも寿命は長いが、出生率は人間よりもずっと低いからな。」
「なるほど…
言われてみれば、この村にも子供は少ないな。」
「だから、子供欲しさにハイブリッドを生み出してしまうような奴もいるんだ。」
「なんだって!?
それは、一体どういうことなんだ?」
アルディの話によると、最初のハイブリッドは、獣人の血を絶やしたくないと考えた獣人が、人間の女をかどわかして産ませた子供だということだった。
ハイブリッドにもいくつかの種類があり、より獣人に近い者もいれば、人間に近い者、ごく一般的な人間にしか見えない者や獣人そのもののような者と様々で、生まれてみないとわからないという点が数々の悲劇を生み出して来たのだという。
「人間に似て生まれた子は処分されたと聞く…
我々の祖先にも酷い奴はいたのだな…」
アルディはそう言うと、手に持った酒を一気に飲み干した。
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