「まぁ、夕陽が綺麗だわ!」

カインの背中で、うっとりと目を細めたリュシーが呟いた。



「本当に美しい夕日じゃのう…」

「ここからだと月も星もきっと綺麗に見えるんだろうな!」

足を止めて夕陽に見とれる三人の後ろから、細く哀れな声がした。



「お…おーい…ま、待ってくれ…
もう少し、ゆっくり行ってくれよ…」

枯れ枝を杖にしたフレイザーが、息も絶え絶えになって登って来る。



「情けないのう…
あんたがわしのことをおぶってくれるんじゃなかったのか?」

「そ、そんなこと言ったって…
こんなにきつい山登りはしたことないんだから…」

「仕方ない。
少し休むとするか…」

疲れきったフレイザーの様子を見て、カインがそう提案した。
三人は、近くの岩の上に腰を降ろし、フレイザーは地面に手足を広げて寝転んだ。



「はぁぁ……
もうだめだ…俺、もう一歩も歩けないぞ…」

泣き言を言うフレイザーに、リュシーは水筒を差し出した。



「ここから先は、あなたがカインさんにおぶってもらえばいいわ。
私は歩きます。」

「そ、そんなこと…
お、俺…大丈夫です!
少し休んだら大丈夫ですから!」

フレイザーは即座に上体を起こし、水筒の水をぐびぐびと流しこんだ。



「遠慮しなくて良いんだぞ。
さぁ、フレイザー、俺の背中に乗れよ!」

「ば…馬鹿!
ちょっと休んだら大丈夫だって言っただろ!
さ、さぁ、もう行くぞ!
ぐずぐずしてたら日が暮れちまう!」

赤くなった顔を見せないように、フレイザーは皆の先頭を歩き始めた。



「おいおい、待てよ…」

三人もすぐにフレイザーの後に続き、しばらく歩いた時、四人は獣人の男性と出くわした。



「フ、フレイザーさんじゃないですか!
一体、どうしたんです?
それに、この人達は?
……見かけない獣人だな。」

「えーーーっと…すまない。
誰だっけ?」

獣人の顔は、人間からすると見分けが付き辛い。
フレイザーにはその獣人が誰なのかわからなかった。



「わからないんですか?俺ですよ、テッドです。」

「……テッド?
あ!思い出した!へんてこな踊りを踊ってた奴だな!」

「へんてこはひどいなぁ…
それはそうと…」

テッドは、カイン達の方へ興味深げに視線を移す。



「詳しいことは、村に着いてから話すよ。」


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