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リュシーは初めて見た獣人のためか久しぶりの冒険のせいなのか、いささか興奮しているようで、いつもよりずいぶんと饒舌になっていた。
しかし、そのおかげで四人は狭い船室でも退屈することなく、一週間の船旅を終える事が出来た。
イグラシアに着いた四人は船を乗り継ぎ、そこから馬車を頼んでようやくゴーシュリーの町に辿り着いた。
宿に泊まろうと提案したフレイザーに、早くカインをトランクから出してやりたいからと、リュシーは山の麓で野宿をすると言い出した。
フレイザーの説得にもリュシーは耳を貸さず、結局、四人は山の麓で野宿をすることになった。
*
「あぁ〜〜!空気がうまい!!」
長時間トランクに閉じ込められていたカインは、大きくのびをし、深呼吸をした。
「すまなかったな。
どこも人がいて、トランクを開ける場所がなかったんだ。
でも、ここまで来たらもう大丈夫だ。
この山には誰も近付かないからな。
堂々と歩いて行けるぜ。」
「そいつはありがたい。
もう二度とその中に入るのはごめんだな。」
「ただ…見ての通り、けっこう高い山だ。
魔物はたいしていないし、いても雑魚ばっかりだから心配はいらないんだが、かなり険しい道程だからリュシーさんが登れるかどうか…」
そう言いながらフレイザーは、リュシーの方に視線を移した。
「大丈夫です!
私、ハイキングはけっこう好きで、何度か山には行ったことがありますから!」
無邪気に微笑むリュシーに、フレイザーは苦笑いを浮かべた。
「疲れたら俺がリュシーさんをおぶっていくよ。」
「じゃあ、俺はダグラスさんを…」
「馬鹿を言うな。
わしは年は取っておるが、薬草を集めに日頃から山や森ばかり歩いておる。
おまえさんの世話にはならん。」
年寄り扱いをされたことでダグラスは気を悪くしたのか、肩をいからせ、フレイザーを睨みつける。
「そ、そうか、なら心配ないな。
……それはそうと、リュシーさん、野宿なんて初めてなんだろう?
本当に大丈夫なのか?」
「まぁ、フレイザーさんったら、今更何を言ってるの?
こんな機会めったにないんだもの。
私、楽しくて仕方ないのよ。
家の外で、しかも地面の上に寝るなんて…本当に楽しみだわ!」
夢見がちに視線を宙に泳がすリュシーに、三人は口を開け間の抜けた表情を浮かべた。
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