060 : 手繰りよせたなら19






「ありがとう、クロワさん。
あなたにお願いして本当に良かった。
私ではこういう買い物はとても……」

「お役に立てたなら嬉しいですわ。
でも……びっくりしました。
まさか、こんなことを考えられてたなんて……」

さらに、また一週間程の時が流れ、ついに私達の作業もほぼ終了となった。
リュックが細々とした所の仕上げをする間に、私はクロワと一緒に町に買い物に出掛けた。
本当は私一人で行く筈だったのだが、やはりどうにも自信が持てなかった。
そこで、リュックに相談した所、彼も賛成してくれたので、彼女に買い物の手伝いを依頼したとうわけだ。



「クロワさん、どう思われますか?
エヴァは喜んでくれるでしょうか?」

「もちろんですわ。
絶対に喜んで下さいますよ。」

「……それなら良いのですが……」

私達は両手に抱えきれない程の荷物を持ち、険しい山を登ってようやく村に辿り着いたのは、もう日暮れが近付いた頃だった。







「すごい荷物だな!」

「まぁ…とても素敵じゃない!」

クロワはリュックに返事をすることも忘れたかのように、室内を眺めまわし、瞳を輝かせた。



「本当か?
俺達、皆、あんまりセンスないから、三人で一生懸命話しあって考えたんだ。」

「とっても良いわ!
壁の色も落ちつくし、家具の配置もゆったりしてて……
まぁ、この窓からの景色は最高ね!」

クロワは窓際に座り、うっとりとした表情で窓の外をみつめる。



「あれは、サイモンが植えてくれたんだ。
なかなか綺麗だろう?」

窓の外には、色とりどりの花が一面に咲き誇る庭が見える。
この村には、あちらこちらに自然の草花が群生しているが、色や配置を考えられたこの花壇は格別に目をひくものだ。



「リュック、クロワさんにみてもらって良かったよ。
センスの良いものがみつかったし、私の気付かなかったものもいろいろと教えて下さってな。」

「そうか、そりゃあ良かった。
クロワさん、ありがとうな。
じゃ、早速それを並べていこうか。」

クロワのおかげで、仕上げの作業は一段とはかどり、サイモンが来た頃にはもう手伝うことはほとんどない程になっていた。


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