060 : 手繰りよせたなら18






「なんだか、ごたいそうだね。
あんな柵まで建てるなんてさ。」

「そう言うなよ。全部出来てから見た方が、喜びも一入だろ?」

「わかったよ。
楽しみにしてるよ。」



気がつけば、村に着いてもう一週間の時が流れていた。
村の者達は、エヴァの帰還を素直に喜び、まるで家族が戻って来たかのように暖かく迎え入れた。
そのことに、エヴァは涙を流す程感動し、そして、今までの勝手な振る舞いを心から詫びた。
村の者達は快くその謝罪を受け入れ、エヴァも今まで抱えていた心の重石が取れたのか、ほっとしたような笑みを浮かべた。
それは、彼女の傍らで心配そうに見守っていたリータやサイモンも同じだった。
エヴァの安堵した顔を見ながら、二人も同じように微笑む。



次の日、サイモンは山の仕事を休み、早速、私達はエヴァのための空き家を訪ねた。
サイモンが連れて行ってくれた空き家は、村の中心あたりにある程ほどの大きさの家だった。
古いが、普請はしっかりとしたもので、手を加えなくともすぐに住めそうな家だ。
その日は、家の中を見ながら三人でおおまかな改造点を話し合い、その間、クロワは大好きな薬草探しに出掛け、クロードも彼女に付き添った。

そのまた次の日からは早速私とリュックで改築に取りかかり、サイモンは山の仕事が済むと、その後すぐに駆け付けて手伝ってくれた。



私とリュックはサイモンの家に、クロワとクロードはリータの家に厄介になりながら、食事は皆で採るようにしていた。
その日のちょっとした出来事を、皆が報告しあいながらの賑やかな食事だ。

村に戻って来てからのエヴァは、それまでとはすっかり装いを変えた。
派手な身なりをやめ、長い髪も一つに束ね、厚化粧をやめた彼女を見た時はとても驚いたものだが、その顔は確かにディヴィッドにとてもよく似ていた。



「ところで、あんたの方はどうなんだ?
畑仕事にはまいってないか?
料理は少しはうまくなったのか?」

「さすがに畑仕事はこたえるよ。
こんなに身体がなまってるなんて、自分でも思ってもみなかった。
でも、料理はまぁまぁ上達してると思うよ。
今日の食事だって、大半はあたしが下ごしらえしたんだからね。」

「僕もお手伝いしたよ!」

ディヴィッドは、すでに村の生活に慣れた様子で、以前よりもずっと元気で子供らしい印象を受けるようになっていた。


- 355 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

お題小説トップ 章トップ

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -