060 : 手繰りよせたなら14






「エヴァ、元気でね!」

「またいつでも遊びに来いよ!」




エヴァを見送りに来たのは、酒場の仲間達だった。
皆、朝はきっと苦手なのだろう。
ショボショボとした目にはうっすらと涙が浮かび、エヴァやディヴィッドの身体を代わる代わる抱き締めて別れを惜しむ。



「あんたらも、ぜひともあたしの故郷に遊びに来ておくれ。
何もない所だけど、ほっと出来る所だよ。」

「あぁ、必ず行くよ!」



エヴァも名残惜しそうに、仲間達の身体を抱き締めた。



「さようなら。」

ディヴィッドはエヴァよりも冷静に皆と挨拶を交わし、その後、私達は町外れの墓に立ち寄った。
そこは、ディヴィッドの面倒をみてくれたという老婆の墓だった。
おそらくは、リータに諭され、エヴァは老婆のことを思い出してもいけないと言った言葉を撤回したのだろう。
老婆の墓に花を手向けたディヴィッドは、瞳を潤ませながら、小声で何事かを呟いていた。
きっと、エヴァの故郷に行く事を報告しているのだろう。
エヴァやリータも、ディヴィッドの後ろで同じように手を組み、老婆に祈りを捧げていた。



朝早くに町を離れた私達は、二つの町を通り過ぎ、日が暮れた頃にようやく三つ目の町に着いた。
つい先日通ったばかりの道だ。
旅慣れた私達にはそれほど堪える道程ではなかったが、あまり遠出をしないというエヴァは、町に着いた頃には、酷く疲れた様子で道端の岩に腰を降ろした。



「あなた、お酒ばかり飲んでるから、そんなに身体がなまってるのよ。
村に戻ったら、また身体を鍛え直さなきゃ……」

「おばさん…それは、仕方ないじゃないか。
エヴァだって、飲みたくて飲んでたんじゃない。
仕事だから飲んでたんだぜ。
エヴァ、宿屋までおぶっていってやろうか?」

「ば、ばか言うんじゃないよ。
このくらい、なんでもないさ。」

声をかけたサイモンから視線を逸らし、エヴァは空元気を出して立ち上がった。



「あ……」

危ない!と思った瞬間、よろめいたエヴァの身体を、サイモンが素早く支えた。



「大丈夫か?」

「こ、小石に躓いただけだよ。
さ、宿屋をみつけなきゃね!」

サイモンの手を振り払い、エヴァはさっさと一人で歩き始めた。


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