060 : 手繰りよせたなら2






「本当にさっきはびっくりしたぜ。
エヴァの気が強いのは、リータさん譲りだったんだな。」

「やめてよ、リュックさん。
さっきはつい感情的になっただけ。
私は、この子みたいに気が強くないわ。」

「よく言うわ。
私なんて、母さんに比べたら子羊みたいなものよ。」

「狼を食う子羊ね。」

「母さん!」



親子とは…血の繋がりとはこんなにも強いものなのか……
さっきはどうなることかと思ったが、ひとしきり泣くと、二人はいとも簡単に和解した。
要するに、二人共ずっと会いたいと願いながら、リータはエヴァの居所をみつけられず、エヴァはつまらない意地を張って、母親に会いに行けなかった。
だが、一度、顔を合わせてしまうと、そんな意地はどこかに吹き飛んでしまったようだ。



「それにしても、母さん、少しも変わらないね。
いや、あの時よりも若くなったくらいじゃないか。」

「確かに、そうして並んでると、親子っていうより姉妹みたいだな。」

まさにリュックの言う通りだ。
別々に見るとあまり似ていないと思った二人だったが、並ぶとやはり雰囲気のようなものが似ていて、血の繋がりを感じさせられる。




「よく言うわ。
この子がいなくなってからは、体調もすぐれなくて働けない時期もあったのよ。
でも……村の人達がとても良くしてくれて……
ここに来た時もみんなに心配してもらったのに、この上またみんなに迷惑をかけちゃいけないって思い直して……
それから少しずつ元気になったの。
そうそう…サイモンもとてもよくしてくれたわ。
一時期はうちに泊まり込んで、食事の世話からなにからなにまでやってくれたのよ。」

「そう…サイモンが……昔からあいつは面倒見が良い奴だったからね……」

「母さん…僕、サイモンさんに会ったよ。
村を案内してもらって、ジョアンやシュリーとも遊んだよ!」

ディヴィッドは知った名前に反応し、嬉しそうに横から口を挟んだ。



「……誰だい?それ……」

「エルザの子供達よ。」

「エルザの……?
そう……」

「旦那さんは……ドナルドさんよ。」

「えっ!!
ドナルドさんって、まさか村長の……」

頷くリータに、エヴァは再び驚きの声をあげた。
私にはその驚きの意味がわからなかったが、エヴァの顔を見て微笑むリータに、なんとなく私の心もほっと和んだ。


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