060 : 手繰りよせたなら1






「ちょっと!一体どういうことなのよ!」



私達はまた数日をかけて、来た時と同じルートを引き返し、ひさしぶりに町に戻った。
今度は行きとは違い、リータという同行者が増えている。
もちろん、端からすんなんりとうまくいく等とは考えてはいなかったが、リータの顔を見るなり、エヴァは目を吊り上げ大きな声で私達を怒鳴り付けたのには、いささか驚いた。



「あのな…実は……」

「なかなか戻って来ないから心配してたら、何なんだよ!
……酷いじゃないか!」

「だからな…」

「帰っとくれ!
あんた達にディヴィッドを任せたのは間違いだったよ!
さ、ディヴィッド、こっちに来るんだよ!」

エヴァは、リュックに話す機会を一切与えず、怒りのおさまらない様子で乱暴にディヴィッドの手首を掴む。



「……待って、母さん。」

「おだまり!」

「母さん…ちょっとだけ……」

「黙れって言ってるだろ!」

感情的な叫び声と共に上げられた手をリータが掴み、その頬をもう片方の手で叩いた。
景気の良い音が部屋の中に響き、ディヴィッドは驚いたような顔をしたまま、動きを止めて二人をじっとみつめる。



「あんたって子は……」

そう言うと、リータはエヴァの身体を引き寄せ、強く抱き締めた。



「……会いたかった…エヴァ……
あれから、どれだけ探したことか……」

小さな声で呟くリータの瞳からは、一筋の涙が流れ出す。



「……母さん……」

意外なことに、今度はエヴァが涙を流していた。
私もリュックも思い掛けないこの展開に、ただただ顔を見合わせ戸惑うばかりだった。


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